最近、大学生などの若者の間で位置情報を共有するアプリが流行っているのをご存知ですか?Twitterやインスタのように画像や動画をシェアするのではなく、位置情報をシェアする今どきの若者の現状と、位置情報に潜むリスクについて紹介します。
SNSにおけるシェアの歴史
この10年でインターネットにおいて共有されるコンテンツは大きく様変わりしました。
2000年代初期はmixiなどの完全招待制SNSで素性のわかる人たちとそれぞれ「好きなもの」について語り合うコミュニティが形成されました。
2010年代になるとスマートフォンの普及によって、より些細で身近な話題を不特定多数のユーザーと意見を共有しあう「Twitter」などの開かれたSNSが勢いを増しました。
その後、文字だけなく、画像や動画を投稿することが普及していきました。さらに、通信回線4Gの普及により、Instagramのような画像に特化したSNS やYouTubeなど手軽に動画を見るサービスが普及し、SNSにとって動画や画像は必要不可欠になっています。
そんな中、今は画像や動画だけにとどまらず、位置情報を共有することが若者の間で流行っているのはご存じですか?なぜ今、若者が位置情報を共有しているのか、詳しく見ていきましょう。
なぜ今、位置情報アプリが流行るのか
一つの原因として、現代の若者特有の心理が関係していると考えられます。
LINEやInstagramなどのSNSが普及し、トークやストーリーズ(24時間で消える写真や動画の投稿機能)で友人が「今なにをしているか」というコンテンツに触れることが当たり前となり、「今」を共有することで、仲間とずっと繋がっていることに喜びを感じていると考えられます。さらに、その意識が強くなり、「今どこにいるか」を知ることが、より仲間と繋がっていることと感じるように変化していると考えることが出来ます。
それでは、位置情報共有アプリは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
若者にダントツ人気の「Zenly」
実は、位置情報共有アプリは数多くリリースされています。その中でも人気なのは「Zenly」です。「Zenly」は2015年にフランスで開発され、2017年に同じSNSのSnapchatに買収されました。Android版のダウンロード数は1000万を超え、主に大学生を中心とした若者のあいだで利用されています。(2020年3月2日現在)
それでは、少し「Zenly」の使いかたを見てみたいと思います。
友達の追加方法
Zenlyでは、「連絡先」、「Zenly ID」、スマホ同士をぶつけて追加する「BUMP」などの方法で友達を追加することができます。
「BUMP」は人口密度の高い場所で行うと、誤ってほかの人のZenlyを追加してしまうおそれがあるため注意が必要です。
位置情報の記録
過去に滞在した場所に様々なマークが付与されます。旅先で泊まった宿や、自宅の位置を滞在時間から計算して自動的に判定され、「宿」や「家」のマークが付与されます(図2参照)。また、仕事場にいるときは「パソコン」のマーク、学校にいるときは「アカデミックドレスの帽子」のマークが表示されます。
位置情報共有を停止する
位置がバレたくないときはゴーストモード機能を使うことが出来ます。「あいまいな位置」や「フリーズ」と表示させる2つの方法があります。
友達に位置情報を知られたくないときには、ゴースト機能を活用するのですが、相手側からはゴースト機能を活用していることが、わかる状態です。そのため、「なにか隠しごとをしているのでは?」と、疑惑をかけられる可能性もあります。
「Zenly」の活用方法
位置情報の活用は、様々です。いくつか若者が使っている活用方法を紹介します。
近くにいる人と一緒に帰ったり、ご飯を食べに行ける
位置情報が常にオンなので友達がどこにいるのかリアルタイムでわかります。近くに友達がいれば、簡単に一緒に帰ることや食事に行くことが出来ます。時間を有効に活用することができることがメリットです。また、待ち合わせ時も、位置情報を確認しながら、スムーズに合流することが出来ます。
スマホを紛失した際に場所がわかる
スマホをなくしてしまったとき、iPhoneであれば「iPhoneを探す」機能を使って探すことができますが、パソコンなど自分が持っているほかのデバイスが必要です。Zenlyでは友達が近くにいれば、外でもなくしたスマホの場所をある程度特定することができます。
カップルの浮気防止
定期的にゴーストモードにしている時間帯などから浮気していないかをチェックすることができます。また、位置情報とともに電池残量も表示されますので「充電が切れた」といった言い訳も通用しなくなります。小学生や中学生には、親が子供の防犯対策として、活用しているケースも有るようです。
位置情報共有アプリを使うリスク
このような位置情報共有アプリは使い方が正しければ非常に有用なものですが、使い方を間違えると個人情報が簡単に漏洩してしまいます。
特に注意すべきなのは、小中学生による使用です。インターネット上にはZenlyの友達を募集する掲示板が存在しており見知らぬ人と位置情報を共有することができます。小中学生の間ではこうした掲示板であたらしい友達を追加したり、募集したりすることが人気となっています。
友達を追加後に削除することはできますが、いったん行動パターンを見られてしまうと、自宅や通学先がわかってしまうおそれがあります。ストーカー犯罪にもつながりかねないため、とても危険です。ネットリテラシーがまだ十分についていない小中学生の使用はよく考える必要がありそうです。
大学生や若者でも同様に、位置情報を知られるのが不都合である機会は頻繁にあります。サークルの飲み会に「行けたら行く」と言って来なくてもなぜかサークルの女子と一緒にディズニーランドにいる、など常につながっているからこそ窮屈に感じられることもあるでしょう。ゴーストモードにしても怪しまれたりするおそれもあります。
位置情報アプリの流行から考えられる、企業の注意点
企業が考えるべきことの一つは、若者が使用するSNSは想像以上のスピードで変化しているということです。SNSへの広告出稿を行っているが、そのSNSのアクティブユーザーにターゲットが居ないことも考えられます。
もう一つは、Zenlyのような位置情報に特化したアプリに限らず、多くのSNSで位置情報を利用したサービスが提供されていることです。機能を把握していないと自分の自宅の場所などプライバシーにかかわる情報がいつの間にか漏洩している可能性があります。
例えば、従業員のプライベートのTwitterが炎上した際に、オフィスの位置情報が公開されている場合は、勤務先の特定につながります。結果的に、企業にも飛び火する可能性があります。FacebookやInstagramでも投稿に気軽に位置情報を追加できるため、同様のリスクが生じます。
また、昨今のテレワークの推奨で自宅から公式SNSアカウントの更新をする場合に、誤って自宅の位置情報を掲載してしまうと個人情報の漏洩にも繋がってしまいます。
まとめ
今回ご紹介した位置情報アプリのように、若者が使用するアプリの変遷は、想像以上に早く、最適な媒体、プラットフォームの情報収集が必要です。また、公式アカウント等の運営時には、新しいSNSにどのようなリスクが潜んでいるのかまで情報収集を行い、インシデントが発生しないように準備することが大事です。
デジタルリスクラボでは、今後も最新のSNS情報と企業の活用時のリスクを紹介していきます。
デジタルリスクラボ編集部
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