多くの企業やブランドが公式のSNSアカウントを持っており、以前よりも企業からの情報発信の場は増えています。広報やデジタルマーケティングの部署が中心となって、情報を発信している企業も多いと思います。そこで今回は「未然に風評被害を防ぐ発信」の事例を紹介したいと思います。
企業経営にダメージを与えるWeb風評被害
世の中には、噂話は絶えません。その噂話の対象が企業になってしまうケースは当たり前に存在します。事実ではない情報や憶測で話が広がり、場合によっては企業のブランドイメージが毀損されてしまうケースが多々あります。
井戸端会議といったようなものであれば、その場に居た人にしか話は伝わらないので限定的かつ一過性な話題になりますが、デジタル社会は異なります。SNSを通して一気に話が広がるだけでなく、数年前の話題がWeb上に永遠に続けることも珍しくありません。
検索エンジンの上位に表示されてしまうと、取引先や求職者が企業を調べる際に目にしてしまうケースもあるので、小さな噂話であっても気付かぬうちに風評被害となり、企業経営に影響を及ぼしている可能性は否定できません。
風評被害を生まれる前に対応を!
風評被害を未然に防ぐためのリスクマネジメントは、企業にとって重要な取り組みです。
個人的に参考にしたいと思った、風評被害を未然に防ぐための企業の情報発信事例をご紹介します。
自社製品での事故を未然に防ぐための発信|楽器販売「ヤマハミュージックジャパン」
年末に騒がれた日産元会長のゴーン氏の出国の事件。一部メディアでは、出国時に楽器のケースに隠れて、出国ゲートを突破したという報道がなされました。その報道を見た人が楽器ケースに入ることで事故が発生してしまう可能性があることを注意する発信です。
【お願い】
理由については触れませんが、大型の楽器ケースに人が入ることに関することをネタにしたツイートが多く散見されるようになってきました。
不幸な事故が起きてからでは遅いですので、皆さんの周りでは実際にそのようなことをしない、させないように皆さんで注意し合ってください。
— ヤマハ・ウインドストリーム (@Yamaha_Wind_jp) January 11, 2020
出典:Twitter
今回の事象に関しては、事故が起きてからでは遅いという企業側の判断があったのではないかと考えます。また情報を発信するメディアの選定に関しては、twitterでの注意喚起のほうがターゲットに届く可能性が高いという企業側の考えがあった、あるいは、ゴーン氏の出国方法についての真偽が不確かな状況の中、公式HPでの掲載は事実として捉えかねないというリスクがあった為Twitterを選定した、などが推測されます。
また、類似の事例では、自社製品ががん治療の効果向上に繋がると報道された企業が、公式HPで誤った使い方を注意するリリースを発信したケースがあります。
出典:プレスリリース|~1月23日(木)、一部報道について~(ヤマト株式会社)
がん治療の効果向上に繋がるという報道があった際、SNS上では、「報道を見てガンを治すために、のりを飲む人がいるのではないか?」「のりを飲まないように!」という発信が拡散されていました。
そういった投稿もあり企業は、下記のように医学領域での自社製品の可能性を喜んだ一方で、本来の目的以外での使用に関して注意喚起を行っています。
当社としましては、2019年5月の話題同様、またもこのような医療分野への可能性が液体のりの主成分PVAにあることに大変驚いているとともに、明るいニュースに大変喜ばしい限りであります。
尚、当社商品におきましては、一般消費者の方の本来の目的以外の誤ったご使用はおやめくださいますようお願いいたします。
※引用先:プレスリリース|~1月23日(木)、一部報道について~(ヤマト株式会社)
誤った活用方法で健康被害が発生し、場合によっては自社の風評被害に繋がる可能性まで広報担当者が想定出来ていたケースであった思います。
しかし、これから起こり得るであろうリスクを事前に、かつ網羅的に想定することは非常に難しいことだと思います。
だからこそ、常に最新の情報を取得しリスクとなりうる事象をいち早く検知することが重要です。自社に関連するニュースが発信されていないか、またそのニュースに対して世論でどのような反応がなされているかを確認した上で、企業としてどう対処すべきかを考えることが、リスクマネジメントの一歩と言えるのではないでしょうか。
まとめ
デジタル時代の風評被害は、広がりやすく、残り続けるという特性を持っています。逆に言えば、企業のポジティブな対応や発信も広がりやすく、ずっと残り続けるとも言えます。
そういった意味で、広報やマーケティング部署の役割は重要性が増していると言えるのではないでしょうか。Web上のユーザーの声を確認・分析するなどして、自社の発信している内容を客観的に見返し、企業価値向上に繋がる情報発信になっているのか確認する機会を設けてみることをお薦めします。
デジタルリスクラボ編集部
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