トレンド情報

SNSが変える旅行のあり方~オーバーツーリズムとSNS~

海外からの訪日客は過去最大の人数となり、2020年には東京オリンピックの開催もあいまって、今後も海外からの観光客は増え続けることが想定されています。さらに、今後も国策として、観光立国、訪日観光客の増加に取り組んでいます。そんな中で叫ばれている「オーバーツーリズムとSNS」について、考えてみましょう。

京都の秋に異変が起きていた?

日本の古都京都には、紅葉の名所と言われる場所が多く点在しており、11月中旬から12月に掛けて見頃を迎えます。南禅寺や清水寺、嵐山、貴船などの名所をご存じの方も多いと思います。

しかし、テレビやネットを通じて見えた2019年の紅葉の名所の様子は少し異なっていたように感じました。例年賑わいを見せる紅葉の名所ですが、一部の観光地に国内外から観光客が殺到し、大行列が発生していました。筆者は、学生時代を京都で過ごしていましたが、その当時には見たことのない長蛇の列でした。

紅葉だけではありません。京都の祇園では、舞妓さんの写真を取るために海外の観光客が押し寄せ、「舞妓パパラッチ」という迷惑行為が話題になっています。地元住民は、私道での写真撮影を禁止にするなどの対策を講じています。

そういった状況に対し、京都市の門川市長は下記のように発言しています。

「京都は観光都市ではない。観光のために作られた町ではない。市民の皆さんの安心安全と地域文化の継承を重要視しない宿泊施設の参入については“お断りしたい”と宣言いたします。」

このように、地元住民の不満や生活に悪影響を及ぼす観光公害は「オーバーツーリズム」と呼ばれています。JTB総合研究所では、「オーバーツーリズム」を下記のように定義しています。

オーバーツーリズム(JTB総合研究所)
特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、地域住民の生活や自然環境、景観等に対して受忍限度を超える負の影響をもたらしたり、観光客の満足度を著しく低下させるような状況。

この問題は、日本だけでなく世界中で表面化しています。

オーバーツーリズムとSNS

オーバーツーリズムは、観光客の絶対数の増加が観光地のキャパシティーを超えてしまうことが原因の一つと挙げられ、観光地での混雑を生じさせています。

オリンピックに向けて、日本政府が力を入れてきた効果もあり、2018年度は3000万人を超える外国人が日本を訪れました。2010年度の実績が、約860万人であったことを考えると急激に拡大していると言えます。

これは日本に限ったことではなく、UNWTOのレポートでは、1950年に年間2500万人だった世界の海外旅行者数は、2016年には、約50倍の年間12億人にも達しているとのことです。

しかし、海外旅行者数の増加だけが「オーバーツーリズム」の原因とは言い切れません。
局所的な混雑や一部地域に多くの観光客が押し寄せる要因の一つにSNSが挙げられています。最近では、旅行先をSNSで決めるというユーザーがいたり、旅をしながらSNSで情報発信し生計を立てているインフルエンサーも存在したりしています。それだけSNSと旅行が双方に与える影響は年々拡大していると考えられます。

SNSは諸刃の剣!?

オーバーツーリズムとSNSの関係を、観光地側とユーザー側からの側面から整理してみると、下記のような事象が起きていると考えられるのではないでしょうか。

(1) 観光地または地元住民が把握や許可していないところで情報が発信される
(2) 一般ユーザーの誰しもが観光大使(インフルエンサー)になり得る

昨年もInstagramで“映える”写真を撮影するために、一般ユーザーが私有地や進入禁止の場所に侵入し問題になった事例が複数件発生しました。以前から、一般ユーザーが撮影に来ていた場所であっても、SNSで情報が拡散し訪れるユーザーが増加することで、被害が拡大してしまったケースが後を絶ちません。

SNSが普及する前は、テレビや雑誌で特集されると観光客が押し寄せることはあったでしょう。ただ、テレビや雑誌などの場合は事前に掲載許諾を取るので、観光客の増加を想定し事前準備を行うことが可能だったと思います。なんとか需要の期待に答えようと多くの企業や観光地が努力していたことが想像されます。

しかし、SNS強いてはWebの世界では、いつどこで注目を集めているのか(バズっているのか)を把握することが難しく、突然の観光客に現場がその需要に答えきれないオーバーツーリズムに繋がっているとも言えます。また、前述した事例のように、SNSによって観光地ではない場所が、突如として、観光地だと誤認識されてしまう事象が発生しています。

もちろん悪いことばかりではなく、SNSによってこれまで知られていなかった素晴らしい場所にも注目が集まるようになり、観光業が活性化したケースもあると思います。

ただ、観光地やそれに準ずる場所からすると、知らぬ間にWeb上で話題の場所になり、気付いた時には許容出来る観光客のキャパシティーを超えてまっていたという問題に繋がりかねません。

また、一般ユーザーからすると、何気ない自分の投稿がどのような影響を及ぼすのかを想定する必要があるのではないでしょうか。単純に自分の思い出としてSNSにアップしたつもりが、思わぬ反響でその場所に人が殺到するかもしれません。もしかすると、その場所は本来撮影許可が必要な場所かもしれませんし、はたまたその場所は誰かの私有地かもしれません。

SNSがあれば、私たち誰もがインフルエンサーになることが出来ます。投稿した内容がバズった際に迷惑を被る先がいないかを考えなければなりませんし、SNSで得た情報も内容に誤りがないかを確認した上で、自分自身の行動に移すことが求められているのではないでしょうか。

デジタルリスクラボ編集部


デジタル化社会の新しいリスクの解決メディアとして運営。
デジタルリスクラボに関する詳しい情報は、こちら