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デジタル化で変わる記者会見、企業が行うべき会見への備え

喜ばしいことの発表、謝罪など大勢の記者を前に行われる会見は様々です。中でもネガティブな場合は、一歩間違えれば、レピュテーションを大きく低下させかねない危険性をはらんでいます。
今回は、デジタル化を受けて、どのように記者会見が変化してきたのか、そしてどのように備えた方が良いのかをご紹介します。

従来の会見

2019年も、多くの記者会見がありました。
不祥事に関する謝罪会見では、会見が紛糾し、5時間を超えてしまった事例や、会見中にSNSで盛り上がりを見せた事例、被害者が会見内容にSNS上で反論を行う事例など様々なケースがありました。

従来の会見では、開催する側が会見の開催を周知し、案内状を受け取った記者や関係者のみが参加するケースが多く、限定的な会見を行うことが可能だったと言えます。

しかし、デジタル化が進んだことで、会見内容を実況中継することが可能になったため、私達はメディアを通すことなく、ネット環境さえあればどこにいてもリアルタイムに会見内容を取得することが出来るようになっています。

そのような変化の中で、リスクマネジメントの観点で何が変わってきているのか事例を用いながら、整理してみたいと思います。

登壇者だけでなく、記者も見られている

個人的に興味深い記者会見の一つに、国民的スターのイチロー氏の引退会見がありました。野球界を代表する選手であり、世界中が注目した会見でした。

イチロー氏は英語を流暢に使いこなす一方で、英語だと誤った意図で言葉が伝わる可能性があるという考えから、海外メディアのインタビューには、通訳者を介して、対応を行うポリシーを持っているそうです。

そんなイチロー選手は会見冒頭に、「みなさまからの質問があれば、できる限りお答えしたいと思います。」と語り、一方的な発表だけではなく様々な質問にも答える場となりました。

イチロー氏らしさが全面に出た質疑応答であったことだけでなく、深夜にも関わらず約1時間半にも及ぶ会見であったことも彼のレピュテーション向上に寄与した会見であったと思います。

この会見は、全文の書き起こしにだけでなく、動画で全編が公開されました。それにより、イチロー氏の受け答えに関する反応だけでなく、質問を行った記者の質問レベルが低すぎるとSNS上で話題に上がりました。

近年、デジタル化によって映像での配信が容易になった現代では、会見の登壇者だけでなく、質問をする記者も注目を浴びるようになっています。

某アイドルグループの活動休止に関する記者会見では、「無責任ではないか?」という質問をした記者に対して「失礼過ぎる質問」とSNS上で炎上し、様々なメディアに取り上げられ、ネット上では記者の素性が特定され、それらが記事や動画などでまとめられる結果になりました。

その他にも、結婚発表という幸せな会見にも関わらずマイナスイメージの質問をしたり、スポーツ選手のインタビューに対してジェンダーに関する内容など全く関係のない質問をしたりと、場違いな質問をする記者に対しての批判が多く見られるようになりました。

これまで、記者会見は「開催側」が追及されるケースがほとんどでしたが、最近では「参加側」の記者も追及されてしまう事象が増えてきたように思います。

会場にはいないが、質問が出来る?

某アイドルグループの暴行事件に関して、運営側の記者会見でも、デジタル時代の象徴的な事象が発生しました。

それは、会見場には居ない被害者とされたアイドルが、会見内容についてSNS上でリアルタイムに反論の投稿を行ったという事象です。更に、その内容に気づいた会場の記者が、会見の登壇者に質問を行いました。SNS、会場の記者を媒介して、会場に居ない人物が質問をしたと見ることも出来ます。

今後5Gの発達も含めて考えると、会見のライブ映像配信は当たり前になる可能性あります。従来は、限られた時間で内容を伝える為に、会見を部分的に切り取って報道するケースが多く、それにより会見の全体的な印象や開催側の伝えたいことが適切に伝わらない問題を抱えていました。

しかし今後は、テレビに頼ることなく、ネット上で会見の全体像を見せられるようになったことにより、開催側が本来意図している内容が適切に伝わるようになることが予想されます。

時代の変化により、記者会見を開催する側として気を使うべきポイントも増えていると言えます。全体が見えるようになったことで、前述したように質問者の質問内容の“質”も見られるようになりましたし、また、回答者の受け答え方などの“対処方法“がもより注目されるよう変化しています。

これは、チャンスでもあり、中途半端な対応を行ってしまうと一気にネガティブなレピュテーションが広がる可能性すらあることを示していると言えます。

まとめ

改めて、デジタル時代の記者会見で注意すべきポイントを大きく3つ整理してみました。

視聴量の増加

取材によって一部が切り取られるのではなく、録画や中継を通じて、会見全体の情報を誰でも取得することが出来る環境が整えられます。
会見の開始から終了までずっと見られているという意識、会見に参加している全員が見られているという意識を持つ必要があります。

参加者の増加

SNS上では、会見内容に対して批難や称賛などのアクションが行われ、記者からの追求だけでなく、当事者や関係者などからのSNSを通じた追求コメントが発信される可能性があります。
これまで以上に、記者に対する発表の場ではなく、本来伝えるべき相手への発表の場であるということをより強く意識する必要性があります。

伝わり方の変化

一般ユーザーは会見の内容について、テレビニュースからはマスメディアを通した要点のみの情報が、ネットで配信されているノーカット版からはユーザー自身で解釈した情報が得られるようになっています。
メディアによって伝わり方が異なる可能性があるからこそ、誤解を招く表現や行動を避けるよう意識しておく必要があります。

 

記者会見は、いつ必要に迫られるのかわかりません。特に謝罪会見などは、一つ一つの所作が受け取り手に誤った捉え方をさせることもあります。ぜひ一度、広報やコンプライアンス部門に属される方は、自社が謝罪会見を開催する場合にどんな対策を取らないと行けないのかを確認してみると良いかもしれません。

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【執筆】奥村高大 (おくむら たかひろ)
同志社大学卒業後、銀行に就職。その後、企業の経営課題解決を目的とするフリーランスのシェアリングサービスに従事し、2018年にエルテスに入社。事業推進Grにて、マーケティング業務を中心に、デジタルリスクラボの立ち上げ、運営、執筆を行う。

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