特別企画

スマイリーキクチ氏が語る「ネット風評被害の怖さ」

「殺人犯…」、ある日突然ネットで書き込まれた情報が人生を変えることもあります。今回は、ネット風評被害に遭った経験をもつタレントのスマイリーキクチ氏にその生々しい経験をお伺いしました。
※本記事は、2015年12月1日に公開された記事を一部再編集しております。

ある日突然…

私は1999年、匿名掲示板「2ちゃんねる」に、実際に起きた惨忍な殺人事件の共犯者だと書き込まれました。犯人一覧という中に、私の本名と言ってもいないことや、やってもいないことが、あたかも事実のように書き込まれてしまったのです。

得体の知れない匿名の集団が作った「殺人犯 スマイリーキクチ」が、瞬く間にネット上に拡散しました。荒唐無稽の書き込みを鵜呑みにした不特定多数の人物から、所属事務所のホームページに、誹謗中傷や殺害予告のコメントが投稿されて、抗議の電話も含め、全て事実無根だと否定しました。その時は、これで終わったと思ったのです。

しかし、現実は「やってない証拠を出せ」「事実無根なら、死んで証明しろ」という批判ばかりで、逆に火に油を注ぐ状態に陥りました。まさか、ネットのデマが10年以上続くとは考えもしませんでした。

書き込んだ人の中には大手企業の会社員も!

脅迫や仕事先への嫌がらせが酷くなる状況でも、ネットの中傷で警察に動いてもらうのは、容易なことではありません。

ネットの中傷を理解してくださる刑事さんに出会えるまでに9年の月日が流れ、2009年、国立大学の職員、大手企業に勤める会社員、妊婦、高校生など、17歳から46歳の男女19名の中傷犯が一斉摘発されました。

その中には勤めている会社のパソコンや、会社から支給された携帯電話を使って、僕のブログに中傷や脅迫のコメントを投稿していた人が複数いました。が、摘発された本人達も会社の責任者も「たかがネットに文句を書いたぐらいで、警察が動くことなのか?」という冷ややかな反応で、謝罪の言葉はありませんでした。

この事件を担当した検事が書類送検された人物の処分を下す際、書き込んだコメントと共に名前や住所、勤務先などの個人情報をブログでなら公表してもいいと言ったのです。もし、これらの情報をブログで公開すれば、その日の内にネット上で拡散し、摘発された本人や勤務先の企業は「炎上」では済まないことが容易に推測できました。

公開しなかった理由は事実無根の書き込みで10年間、中傷や仕事を妨害されたので、“ネットの恐さ“を経験しているからです。

インターネットのリスクを改めて考える

近年、暴言、人種差別、中傷や不適切な画像をツイッターなどのSNSに投稿した結果、投稿者の身元が特定されて「炎上」するといった事例があります。企業側の対応に不備があったり、謝罪のタイミングを見誤ってしまうと、事が大きくなってしまうので、ネットに対してのリスクマネージメントが求められる時代だと思います。

SNSを利用せず、ネットの掲示板なら問題がないかというと、そういう訳でもありません。

以前、2ちゃんねるの有料会員の個人情報が大量に流出したことがありました。匿名性をうたっていたはずのサイトが、実名と共に書き込みの履歴や住所、クレジット番号、パスワードなどの個人情報がネット上に公開されて、大きな話題になりました。

名前を公開された人の中には、その日を境に中傷する側から、中傷される側に立場が逆転しました。「誰かを懲らしめたい」「何かを潰したい」という火種に飢えている人間がネット上に存在します。他人のモラルに厳しい人ほど、自分のマナーに欠落しているので、相手に“落ち度“があれば、善悪の見境もなく攻撃を仕掛けるでしょう。

企業にとってイメージは大事な役割を持っています。一人の不祥事によって、長年かけて築き上げた信用が崩れ落ちるかもしれません。情報モラル教育を受けていない世代の大人だからこそ、細心の注意が必要だと感じます。アルバイトも含め、その企業に勤める一人一人が、会社の代表者という意識を持つことが重要だと思います。

スマイリーキクチ氏のTwitterはこちらをご覧ください。
https://twitter.com/smiley_kikuchi

Powerd by Eltes

デジタルリスクラボ編集部

デジタルリスクラボは、株式会社エルテスが、デジタルリスクから「企業成長」と「個人のキャリア」を守るためのメディアとして運営。株式会社エルテスが提供するデジタルリスク対策サービスは、こちら