リスクレポート

ネット炎上レポート 2021年下期版

ネット炎上レポート 2021年下期

エルテスでは、毎月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとして報告しております。今回は、それら2021年下期(7月~12月)の炎上事例を時系列にまとめ、どのようなネット炎上の傾向があったのか。また、過去と比較して、どのような変化があったのかをまとめました。

炎上レポートの主旨

株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上事例の傾向をお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。

エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。

▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。

▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。

本レポートでは、炎上事例の変化を “炎上対象”と“炎上要因”の2つの観点から見ていきたいと思います。

2021年下期全体の炎上傾向

上期(2021年1月~6月)と比較して、2021年下期のネット炎上件数は、14.1%増加しました。図1でも記載しておりますが、最も顕著だった増加カテゴリーは、自治体・団体(前期比+51%)、個人・著名人(前期比+41%)でした。

また、毎月の炎上件数で見ていくと、下期を通じて炎上件数が最多となったのは、2021年12月でした。下期を通じて、炎上が増加した自治体・団体、個人・著名人の炎上に加えて、メーカーによる炎上が増加したことが、12月炎上件数の増加の内訳でした。

図1 2021年下期の炎上件数収集データを元にエルテスが作成

炎上対象からみる下期炎上のトレンド

図2 炎上対象区分(月別)収集データを元にエルテスが作成

図2は、上期と下期の炎上件数を月次で炎上対象別に整理したものです。ここからは、炎上対象の軸で下期の炎上の特徴を見ていきたいと思います。

1)2021年上期と比較して、自治体・団体の炎上が大幅増

上期と比較して、自治体・団体の炎上が51%増加しました。特に、7月~9月の発生件数が多いのが特徴でした。世界的スポーツの祭典東京オリンピック・パラリンピックの開催や新型コロナウイルスの第5波の時期と重なり、それらの関連した炎上の増加が見られました。オリンピックや新型コロナウイルスに関連した炎上が多いのは、これは、新型コロナウイルス、東京オリンピックが世界中の人々にとっての大きな関心ごとであり、炎上参加者の母数が多いことが関係しています。

東京オリンピック・パラリンピックに関連する主な炎上
・関係者の過去の不祥事に対する批判
・食品ロスの観点からの運営に対する批判
・大会運営設備に関する批判 等

新型コロナウイルス対応に関する炎上
・当初発表とは異なる事実が発覚し、改竄を疑われ批判
・ワクチン接種に関連する運営側への批判 等

2)個人・著名人の炎上が増加

個人・著名人を対象とした炎上が、前期比+41%と増加しました。内訳を見ていくと、YouTuberやVtuberなどが批判の対象となる炎上の増加が見受けられました。具体的には下記のような事例が見られ、人気の高いYouTuberに限らず、不適切な言動を行う配信者に批判が集まるという事例が見られています。

○ 障がいをお持ちの方への不適切な発言やいじめの自慢を行った動画への批判
○ 道行く一般女性にアダルトサイトに出演していた?等の質問をする罰ゲーム動画への批判
○ カマキリを露天風呂に入れる動画への批判

次々と新たなプレイヤーの参画が起きる中、YouTuber市場がレッドオーシャン化しており、再生回数を追い求めるがあまり、過激な企画を実施し、批判を受けるというケースが見られるようになっています。

炎上の火種はどのように変化したのか

次に、炎上の火種の観点から2021年下期の特徴を整理していきたいと思います。図3は、炎上内容を比率で整理したものです。

図3 企業・団体が対象となった炎上内容区分(月別)収集データを元にエルテスが作成
※”企業・団体”は図1の「メーカー」「サービス」「IT」「インフラ」「自治体・団体」「教育組織」を指します。

3)上期のトレンドが続く炎上の火種

上期に引き続き、「不適切発言・行為、失言」、「顧客クレーム・批判」による炎上が4割ずつを占め、全体の8割を占める結果となりました。その他の領域においては、「不祥事/事件ニュース」の件数が増加し、上期には1件も見られなかった「異物混入」に起因する炎上が見られました。

なぜ、「不適切発言・行為、失言」の炎上発生が多いのでしょうか。男尊女卑に関する不適切発言、従業員を軽視した不適切発言など様々なケースが見られますが、男尊女卑に関連したから炎上、従業員を軽視したから炎上という考え方の上位概念に、パーセプション(炎上主体となる企業やブランド、人物がどのように認知されているかを理解すること)に相違する言動をとった際に、批判が殺到するということが言えます。

昨今では、企業や著名人がそれぞれのパーセプションを理解することが出来ておらず、不適切発言であると批判を浴びるケースが多く見られます。

<例>
・企業として、女性応援を宣言したプロモーション実施⇒実施企業に女性役員がおらず、言動一致していないと批判
・高校生に商売をさせる企画で、転売で稼いだ高校生を称賛した大手企業経営者⇒大手企業の経営者にもかかわらず、転売を助長させる言動への批判
・政治家が新型コロナウイルスに感染した知人の救急搬送を救急隊員に迫った⇒国政に携わる身として、社会的に搬送が出来ない中で、個人的な意見を押し通したことへの批判

1つ目の例は、自社に女性役員がおらず、対外的には女性活躍が進んでいない企業であるというパーセプションを理解せずに、コミュニケーションを実施したことで批判に繋がりました。また、2つ目の例は自身が大手企業の経営者であり、発言に社会的な影響力を持つというパーセプションを理解しておらず、違法ともなりうる転売を称賛するようなコミュニケーションを実施したことに批判が生じました。3つ目の例は、知人が体調不良になったときに、一刻も早く解決したいと願うのは当たり前のことですが、国政に携わり、国民を代表する立場であるというパーセプションを理解できていなかったために、自身の想いを強く優先させようとしたことに批判が集まりました。

ぜひ、一度自社のパーセプションを理解し、皆さんのコミュニケーション活動と社会の中で、パーセプションにギャップが生じていないかを確認することをおすすめしています。

まとめ

2021年下期の炎上トレンドを見てきましたが、炎上件数としては増加の傾向が見られました。私たちが想像している以上に、私たちの言動は見られている。そして、気軽にSNSを始めとしたデジタル空間にその反響が寄せられる時代となっています。それらを積極的に活用するマーケティング概念のUGCやファンマーケティングという形が広まる一方で、炎上というリスク、そしてそれらには大きな影響力を持つ可能性があります。

そこで、エルテスの運営するデジタルリスクラボでは、引き続き月次で炎上傾向をまとめた炎上レポートを配信していきます。炎上のトレンドを把握頂き、企業のリスクマネジメントに役立てて頂ければと考えております。
また、毎月炎上レポートを配信するとともに、1つ炎上事例を取り上げて、炎上理解を深めるセミナーを開催しておりますので、ぜひご参加ください。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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