2021年2月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2021年2月のネット炎上トレンド
2月の炎上対象区分の中で「企業・団体」による炎上が一番多くを占めますが、先月と比較すると8ポイント減少の62%の結果となりました。一方で、「個人・著名人」は4ポイント増加し22%、「マスメディア」は5ポイント増加の9%となっています。
「企業・団体」炎上区分の内訳は、「サービス」が16ポイント減少し全体の20%、次いで「メーカー」は19%、「自治体・団体」は15%の結果となりました。昨年9月以降「自治体・団体」による炎上件数は10%を下回っていましたが、今年に入り2か月連続で10%を超えており、増加の傾向が見られます。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容で2月に大幅な増加が見られたのが「顧客クレーム・批判」による炎上で13ポイント増加の47%の結果となりました。次いで「不適切発言・行為、失言」は14ポイント低下の32%、「不祥事/事件ニュース」は9ポイント増加の12%となっています。
「情報漏えい/内部告発」による炎上は昨年の10月以降10%以上の数値でしたが5カ月ぶりに下回り、8ポイント減少の9%となりました。最近、企業において増加している「情報漏えい/内部告発」による炎上は、引き続き数値の動きに注目する必要があります。 (図2)
収集データを元にエルテスが作成
「自治体・団体」による炎上が増加
2月は「自治体・団体」による炎上が散見され、中でも地方自治体に関する事例は大きな反響がありました。
以下2つの事例はどちらも自治体の「不適切行為」による炎上でしたが、どのような論調で炎上したのでしょうか?
①市長室にガラス張りのシャワー室を設置
②兵庫県の貯水槽で排水弁の閉め忘れにより水道代が約600万円増加
①に関する投稿では主に市長に対する批判がメインになっていました。
内容としては以下の2点です。
・税金の使われ方に対する非難の声
・シャワー室設置の理由(災害時の開放)に納得しないという声
②に関する投稿は①と同様に「税金」に対する非難の声の他に、当該職員に費用負担させた処分内容に対して批判的な意見が殺到しています。
言わずもがな、自治体が支払うお金は税金から賄われている為、皆他人事とは思えず当事者意識を持っており、自然と関心が高まっていたことも炎上の背景にあったと考えられます。
炎上後の対応のポイント
①と②のどちらの事例も、炎上後の対応に対し批判がありました。
①の事例では、批判が集まったシャワー室の設置に対して、その理由を釈明したところ更なる批判を浴びる結果となりました。
このように炎上した後でその対応を巡ってさらなる批判を受けることはよくあります。
釈明や謝罪の仕方にも注意が必要です。
②の事例に関しては、 “税金を無駄遣いした”という表面的な批判にとらわれ、担当者に費用負担を含め責任を取らせた点が批判を浴びました。
世間の批判を沈下させるため”当事者にしっかりと責任を取らせる”というのは一つ手段です。
しかし、根本的な問題は税金の無駄遣いが再び発生しないための再発防止策のはずです。組織としての問題が個人に押し付けられたように感じた人から、批判の声が上がりました。
まとめ
今回は主に自治体の問題について記載しましたが、ネット炎上のメカニズムは民間企業や、個人でも近しいものがあります。
不注意による事故や予期せぬ問題はどんなに注意をしていてもリスクはゼロにはなりません。
だからこそ、万が一の危機に備えて正しい流れを把握しておくことが非常に重要です。
問題を起こさないための努力と共に、危機管理に対する知識を学んでいただければと思います。
デジタルリスクラボ編集部
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