リスクレポート

ネット炎上レポート 2020年下期版

エルテスでは、毎月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとして報告しております。今回は、それら2020年下期(7月~12月)の炎上事例を時系列にまとめ、どのようなネット炎上の傾向があったのか。また、過去と比較して、どのような変化があったのかをまとめました。

炎上レポートの主旨

株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上事例の傾向をお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。

また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。

エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。

▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。

▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。

本レポートでは、外部環境の変化に合わせて、どのように炎上対象・炎上内容が変化していったのか“炎上対象”と“炎上要因”に分けて、見ていきたいと思います。

炎上対象の変化

収集データを元にエルテスが作成

図1は、2020年1月から12月のそれぞれの炎上対象を比率で整理したものです。2020年下期の大きな特徴は、以下の3つです。

(1)2020年上期と比較して、サービス業の炎上件数が低下

サービス業の企業を対象とする炎上件数は、上期と比べて半分近く落ち込みました。その結果、2020年上期(1月~6月)には炎上全体の45.9%をサービス業が占めていましたが、2020年下期では30.7%まで低下しました。過去と比較すると、飲食店や小売店での炎上事例が減少しています。ここから、新型コロナウイルスの感染拡大による営業自粛などが影響している可能性が推測されます。

(2)7月以降メーカーを対象とした炎上が増加し、下期のトレンドに

一方で、上期には全体の1割にも満たなかったメーカーを対象とした炎上が増加し、炎上比率の17%を占めています。特に11月はメーカーを炎上対象とする炎上が多く、全体比率の20%を超す結果となりました。

メーカーによる炎上要因を分析すると、マーケティング・コミュニケーションの内容への批判が約1/3を占め、その他企業のコンプライアンス問題への批判、製品の品質への批判も多く見られました。また、これらの批判に、新型コロナウイルスの関連するものはほとんど見られませんでした。

批判の引き金となったマーケティング・コミュニケーションやコンプライアンス問題の内容を1つ1つ確認しました。すると、情報公開時に、多様な観点からチェックを行っていれば、ミスコミュニケーションや製品不備が生じていることに気づける内容のものが散見されました。このような炎上が発生している要因の一つとして、テレワークなど多様な働き方が導入され、社内の意思決定フローやコミュニケーションが十分に機能していない可能性も推測されます。

(3)10月~12月に個人・著名人を対象とした炎上が増加

2020年上期炎上レポートでは、新型コロナウイルスの感染拡大による企業活動の停滞を要因として、“企業・団体“の炎上比率が低下し、相対的に個人・著名人、マスメディアの炎上事例が多く散見されたと報告しました。

夏場炎上比率の低下傾向が見られましたが、10月以降は個人・著名人の炎上比率が増加しています。ただし10月に東京発着のGo To トラベルが解禁された秋から冬にかけては、経済活動が再開しつつある環境が影響しているのか、上期とは炎上要因が異なりました。

上期はメディアやSNSにおける政府の新型コロナウイルス対応への批判などが炎上の要因となる傾向が多かったのですが、10月以降はYouTuberやVTuberなどで新型コロナウイルスに関係ない過激な発言を含む不適切な言動があったとし、炎上する事例が増加しています。背景には、コロナ渦における新たな収益の確保を目的としたプレイヤーの増加が影響していると考えられます。
※”企業・団体”は図1の「メーカー」「サービス」「IT」「インフラ」「自治体・団体」「教育組織」を指します。

炎上の火種はどのように変化したのか

収集データを元にエルテスが作成

図2は、炎上内容を比率で整理したものです。

(4)10月~12月の情報漏えい/内部告発の増加

2020年1月以降、下火になりつつあった情報漏えい/内部告発による炎上比率は、8月以降増加しています。10月以降3ヶ月連続で炎上比率の14%を超えています。炎上事例の内容を掘り下げていくと、外部からのサイバー攻撃だけでなく、記憶媒体の紛失・誤廃棄や、利用サービスの脆弱性による情報漏えいなどの事例が取り上げられました。

今回、事件の対象となった企業は、日本を代表する上場企業が多く含まれていました。このような企業であっても、情報セキュリティの脆弱性を抱えているという事実は、日本経済が非常に大きなリスクを抱えているとも考えられます。

また、このような情報セキュリティインシデントが炎上につながるということは、企業レピュテーションにも大きな影響を与える要素だと再確認できる結果であったとも言い換えられます。

その他に、コロナ渦の特徴的な炎上内容として、「断ればネガティブな口コミを記載すると、Go To Eat不正利用を強要する事件」や「新型コロナウイルスの感染者を装って、飲食店を妨害する事件」などが確認されました。

このような事件の場合、事件を起こした個人の元所属企業が批判を受ける事例なども確認されており、従業員へのコンプライアンス意識の向上が企業のレピュテーションを守るためにも必要であると改めて認識させられる事例となりました。

まとめ

炎上対象のトレンドにおいてご紹介した2つの流れは、社会の変化が大きく影響している可能性があります。

1つ目は、産業構造の変化です。以前は、顧客との接点が多いサービス業での炎上が多くを占めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で活動量が低下し、炎上の件数が低下している可能性があります。また、昨今のSNSの普及でインフルエンサー市場は拡大傾向にありましたが、コロナ渦によってそれが加速している可能性があり、結果的に適切なリスクマネジメントを行うことが出来ないインフルエンサーによる炎上が増加している印象があります。

2つ目は、働く環境の変化です。(2)で紹介したメーカーによる炎上の増加に関しては、テレワークなどの従業員間のコミュニケーションの変化が、ミスに気づけない環境を生み出している危険性について紹介しました。また、(4)で紹介した情報漏えい/内部告発にもテレワークの導入など情報の扱い方の変化、従業員の管理体制の変化が影響を与えている可能性が大いにあります。

エルテスの運営するデジタルリスクラボでは、引き続き月次で炎上傾向をまとめた炎上レポートを配信していきます。炎上のトレンドを把握頂き、企業のリスクマネジメントに役立てて頂ければと考えております。

また、2020年12月25日は「総集編|2020年の炎上トレンドと2021年の炎上予測」を発表しておりますので、御覧ください。

総集編|2020年の炎上トレンドと2021年のトレンド予測 今回は、激動の2020年の炎上トレンドを振り返りながら、企業の広報担当者がこれから炎上で気をつけるべきトピックスを紹介していきま...

引き続き、よろしくお願いいたします。

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デジタルリスクラボ編集部

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