リスクレポート

ネット炎上レポート 2020年上期版

2020年も半分が過ぎてしまいました。新型コロナウイルスの大流行によって、誰も想像することが出来なかった2020年となったのではないでしょうか。コロナ禍で現実世界の行動制限が生じることにより、デジタル空間でのコミュニケーションが増加していると考えられます。こうした変化がデジタル空間の炎上にどのような影響を与えたのか、2020年上半期のデータを見ながら振り返っていきます。

炎上レポートの主旨

エルテスでは公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、炎上レポートを毎月作成しています。今回は、2020年上半期の傾向について振り返っていきたいと思います。2020年上半期の大きな特徴は、新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う自粛要請の影響を受けて、企業活動に大きな影響があったことです。外部環境の変化に合わせて、どのように炎上対象、炎上内容が変化していったのか“炎上対象”と“炎上要因”に分けて、見ていきたいと思います。

※炎上事例の定義について
1)日々の監視投稿の中から、AIによるテキスト分析や拡散量などから一定の条件を満たすものをスクリーニング(条件は過去の炎上データから、炎上に繋がりやすいメディア等を適宜チューニングを実施)
2)専任の監視担当が情勢や世論を鑑みて、対象者にとってネガティブな内容であるかの判定

炎上対象の変化

図1は、2020年1月から6月のそれぞれの炎上対象区分を比率で整理したものです。大きな特徴は、以下の3つです。

収集データを元にエルテスが作成

3月以降、企業の炎上比率は低下

企業活動の停滞が起因し、“企業・団体“の炎上比率は減少傾向に転じました。2019年8月以降炎上レポートを配信しており、2020年2月までの“企業・団体“の炎上比率の平均が76%でした。3月以降6月にかけて、 “企業・団体“の炎上比率が6割台で推移することは非常に珍しい結果となりました。
※”企業・団体”は図1の「メーカー」「サービス」「IT」「インフラ」「自治体・団体」「教育組織」を指します。

3,4月は個人・著名人による炎上比率が増加

企業・団体の炎上比率の増加に合わせて、個人や著名人が新型コロナウイルス対策に言及することで、その発信内容が炎上に繋がったケースが見られました。中には、不確かな情報(デマ情報)を発信、拡散することで、炎上に繋がった事例もあります。

5月にサービスへの炎上比率が低下し、マスメディア、自治体・団体の炎上比率が増加

5月にサービスへの炎上比率が大きく低下しました。その影響を受けて、マスメディア、自治体・団体の炎上比率が増加しました。内容としては、新型コロナウイルス関連のマスメディアの報道、自治体の施策に関する炎上でした。緊急事態宣言の中で社会の注目が高かったことが伺えます。一方で6月に入り、マスメディア、自治体の炎上であっても新型コロナウイルスに関連のない炎上が多くを占めていました。6月以降緊急事態宣言の解除を受け、少しずつ社会の関心事が変化していると想定されます。

下期にかけて、炎上対象はどのように変化するのか

新型コロナウイルスに関する論調が落ち着き、企業活動が再開することで、炎上対象は従来の比率に戻っていくことが想定されます。一方で、今後も感染症リスクへの対応に関連しては、企業や個人が炎上の対象となる可能性が考えられます。そのような批判は、企業の採用活動やブランドイメージにも影響を与える可能性があり、注意が必要です。

炎上の火種

図2は、2020年1月から6月の企業・団体が対象となった炎上内容区分を比率で整理したものです。大きな特徴は以下の2つです。

収集データを元にエルテスが作成

2月の顧客クレーム・批判の増加

顧客クレーム・批判の増加要因は、新型コロナウイルスに関連する企業・団体の批判が増加したことが挙げられます。一方で、3月以降は企業活動の停滞により、顧客クレーム・批判が減少しますが、直近の6月はジェンダーや人種差別に関する顧客クレーム・批判が増加傾向です。この背景には、5月末から発生しているアメリカでの人種差別に関連する運動が影響を与えている可能性があります。

3月の不適切発言の急増とその後の減少

3月は約6割の炎上内容が“不適切発言“で、その内容は新型コロナウイルスに関連するものが多数を占めました。その後、”不適切発言“による炎上比率は減少傾向です。6月の炎上に発展した“不適切発言“の炎上事例の内訳を確認すると、新型コロナウイルスに関連したものが約半数であったことから、新型コロナウイルスに関連する“不適切発言“の炎上は、比率、件数ともに低下していることが見て取れます。

2020年下半期の炎上トレンドは?

ここまで、2020年上半期を炎上対象、炎上内容の観点から振り返ってきました。ここからは、上半期の炎上データを元に、下半期の炎上トレンドの傾向を考えてみたいと思います。

2月中旬以降に北海道での新型コロナウイルスの感染者が増加し、日本国内でも新型コロナウイルスの感染拡大が現実味を帯びてきた時期になります。このような背景もあり、企業・団体の新型コロナウイルスの感染予防に対して、「顧客クレーム・批判」が見られました。

具体的には、サービス業界の従業員がマスク着用せずに働いているなどが挙げられ、“従業員を守らない企業“が批判の対象となるケースが見られました。6月以降企業活動は再開していますが、7月に入り、新型コロナウイルスの感染者が再度増加傾向になっています。

政府などは、経済回復を優先した政策を実施しており、新型コロナウイルスの感染拡大が進む中でも、自粛要請などの明確なメッセージが無く、企業活動をどのように継続していくかの判断が各企業に委ねられています。企業はビジネスの観点だけでなく、社会の反応も考慮した対応が求められ、場合によっては新型コロナウイルス感染予防に関する「顧客クレーム・批判」が発生する可能性も考えられます。企業にとって、非常に難しい決断や対応が迫られる可能性があります。そのような状況において、同業他社などの対応方法が、SNSなど社会からどのような評価を受けているかを知ることは重要です。

エルテスの運営するデジタルリスクラボでは、引き続き月次で炎上傾向をまとめた炎上レポートを配信していきます。炎上のトレンドを把握頂き、企業活動に役立てて頂ければと考えております。引き続き、よろしくお願いいたします。

【執筆】奥村高大 (おくむら たかひろ)
大学卒業後、金融機関、コンサルティングベンチャーを経て、2018年に株式会社エルテスに入社。マーケティングGrにて、デジタルリスクラボの立ち上げ、運営、執筆を行う。

デジタルリスクラボ編集部


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