2019年11月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。使用されているデータは、公開されているSNSの情報を独自に収集し、分析したものです。
「サービス」に関わる炎上事例が増加
11月も企業・団体に関わる炎上の事例が多くみられました。
中でも「サービス」が対象となる事例が企業・団体のうちの48%に上り(図1)、10月と比べると20ポイント増加、事例数は10月と比べ1.5倍に増えました。
企業・団体が対象となった炎上内容を分類すると、「不適切発言・行為、失言」が78%、次いで「不祥事/事件ニュース」が20%と大きな割合を占めました。(図2)
最も割合の多かった「不適切発言・行為、失言」に関する炎上では、社長が退職者にむけて送信したメールの内容がパワハラと指摘され拡散したり、同僚に対する暴力の様子がネット上にアップされたりとハラスメントに関する話題が拡散しました。
ハラスメントが関わる炎上が増加
ハラスメントに関する見方は時代とともに変化しています。
「セクシャル・ハラスメント」の言葉は、平成最初の流行語大賞として日本社会に浸透しました。約30年の時代を経て、ハラスメントの種類は、パワハラ、モラハラ、マタハラなど、約50種類にも渡ります。昔は問題にされなかった行動も、現在はハラスメントとして指摘される可能性があることに注意が必要です。
今月は「女性はメガネ禁止」ルールを掲げる企業が実は多く存在した、という話題が情報番組で取り上げられ話題となりました。SNSでも「#メガネ禁止」のハッシュタグとともに、性別によるメガネ禁止を批判する投稿が多く見受けられました。
また近年では、ハリウッドでのセクハラ疑惑の告発をきっかけに話題となった「#MeToo運動」、女性のハイヒール強制の撤廃を目指す「#KuToo運動」の広まりなど、ハラスメント問題に関する社会の感度は、非常に高まっています。
このように、「女性だから」「男性だから」といったジェンダーバイアスを含む話題は社会的にセンシティブな内容であり、様々な意見が集まった結果、炎上に発展してしまう可能性が高い話題です。
日々価値観をアップデートする
ダイバーシティが進み、それぞれの個性を活かす社会が求められる今、差別や偏見に対する感度は非常に高くなってきています。
同時に、それらに関する言葉や価値観も日々変化しています。
例えば、政治的・社会的に正しく差別や偏見を含まない言動を表す、「ポリティカル・コレクトネス」(略称:ポリコレ)、さらには、ポリコレを盾に徹底的に人を批判する「ソーシャルジャスティスウォリアー」などは、元をたどれば1990年代に生まれた言葉です。しかし今では意味合いを変え、軽蔑的なニュアンスを含みSNS上で目にすることがあります。
このように、日々新しい言葉や価値観が生まれ、それぞれの思う正義の意味は変化しています。以前は問題にならなかったが、今では「差別」と受け取られてしまい、炎上へと繋がる事象も起こりえるのです。
このような炎上を防ぐには、最新情報をキャッチし、社会の価値観の変化を捉えることが求められます。企業の方針や取り組みを発表する際は、様々な価値観を持つ人の目に触れることを考慮し、細心の注意を払うことが必要です。
デジタルリスクラボ編集部
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