2019年10月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。使用されているデータは、公開されているSNSの情報を独自に収集し、分析したものです。
企業・団体に関わる炎上の比率が上昇
10月も企業・団体に関わる炎上の事例が多くみられました。2019年9月のレポートと比較しても、炎上に占める企業・団体の比率は上昇しました。
中でも「教育機関」が対象となる事例が企業・団体のうちの13%に上り、9月と比べると6ポイント増加、事例数は9月と比べ倍増しました。(図1)
企業・団体が対象となった炎上内容を分類すると、「不適切発言・行為、失言」が54%、次いで「不祥事/事件ニュース」が33%と大きな割合を占めました。(図2)
最も割合の多かった「不適切発言・行為、失言」は、10月12日に上陸し関東地方や甲信地方、東北地方などに甚大な被害をもたらした台風19号に関する内容が多く見受けられました。昨今の働き方改革の意識の高まりから、災害時でも通常通り営業する企業に対して批判する声が多く集まったのではないかと推測しています。
教育機関が関わる炎上が増加
10月は“地球史上最大規模”との噂も流れた台風19号に関わる炎上が多く、「#台風なのに出社させた企業」がSNSでトレンド入りするなど一時的に大きな注目が集まりました。
一方で、教育機関が関わる炎上は10月を通して長期的に見られ、先月比の2倍と大幅な増加となりました。特に話題として取り上げられたのが教員間でのいじめ問題です。
いじめ自体が聞くに耐えない内容であったことはもちろんですが、本来「いじめはダメ」と児童・生徒に指導する立場である教員がいじめを起こしたという事実は、メディアやSNSで多く取り上げられ世間から批判を浴びる結果となりました。また、いじめ発覚後の保護者会で代読された謝罪の内容が、「反省していない」「ひどすぎる」などと、更なる批判を集め、結果として話題を長期化させることになってしまいました。
では、更なる批判を防ぐためにどうすべきだったのでしょうか。
答えは簡単で、言うは易く行うは難しだと思いますが、“事象を正確に把握”し、関係各所に対して“誠意ある”対応を行う必要があったと考えています。事件が発生した場合には、必ず関係者に事実確認を行い、何らかの処罰または対策を講じる必要があります。加えて不祥事の際には事実の確認だけでなく、該当事象の影響範囲、当事者たちが置かれている状況、世論の反響などを正しく且つ客観的に知る必要があります。
発表された反省文に対しては「犯罪だという自覚がない」「自分は悪くないという気持ちがにじみ出ている」など「当事者意識がない」という意見が多く見られました。それは、事の大きさを客観的に把握できておらず、また周りへどれだけ影響を及ぼしていることなのか理解できていなかった可能性が考えられます。
万が一、自分自身では見落としてしまうことがあったとしても、組織として問題に取り組んでいる状況であれば、どこかで制することができるものですが、それも十分に機能していなかったように見受けられてしまいました。
事件やその他様々な不祥事を完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、発生してしまった後に適切な対応を行うことで、更なる不祥事を防ぐことができると思っています。
炎上などの不祥事が発生してしまった場合、迅速に対応することは非常に重要なことですが、どのような対応を講じるべきなのかを判断する為に“事象を正確に把握”することも重要な要素の一つとなります。
当事者はどうしても主観的な認識が発生してしまうため、受け手だけでなく世論の客観的な視点を正しく掴むことができない可能性があります。その為、今回のような組織に属している人による不祥事の場合、組織としては客観的な視点を当事者に与え、時に反省内容が誤っている場合は制するといった手助けが必要になります。さらに、公表され世間から問題視されている場合は、当事者間の解決だけでなく、組織としての対応も求められてきます。
組織としては、そうした世論への影響も含めた“正確な事象把握”をもとに対応を行っていくことで、更なる不祥事の発生や更なる炎上の発生を避けていくことが可能となっていくのです。
デジタルリスクラボ編集部
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