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五輪開催に向けた企業のマーケティング・広報で気をつけたいこと

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2022年2月に北京で開催される冬季オリンピックですが、各国の代表が外交的ボイコットを表明するなど様々な問題が話題になりました。今回はニュースになった外交的ボイコットの裏でスポンサーを悩ませた課題や、スポンサーではない企業でもマーケティングや広報担当者であれば知っておきたいオリンピックに伴う企業のリスクについてご紹介します。
※本記事は2022年1月28日時点の情報をもとに作成しています。

北京五輪で世界的に起きている問題

冬期オリンピックを直前に控えた12月、アメリカ、オーストラリア、カナダ、イギリスなどが相次ぎ閣僚レベルの政府関係者を開会式や閉会式などに派遣しないと表明しました。
このような、いわゆる外交的ボイコットの動きを受けて、日本政府は12月24日に、松野官房長官が、外交的ボイコットという表現を用いることなく、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長や日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長らが大会に出席し、閣僚など政府代表団の派遣を見送る方針を表明しました。

この外交的ボイコットの背景には、新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル族らへの弾圧など中国の人権問題への懸念が挙げられています。一方で、中国政府はこの人権問題に対して否認しています。また、オリンピック憲章にあるスポーツの政治的中立という原則に著しく反するものとして反対を表明しており、各国の動きに注目が集まっています。

では、企業目線で北京オリンピックにはどのようなリスクが考えられるでしょうか。

スポンサー企業が直面している課題

スポンサー企業は、外交的ボイコットが起きている中で、どこまでオリンピックと絡めた広報やマーケティング活動を行うかが課題となっています。
実際にアメリカ上院議員が北京オリンピックのスポンサー企業に対して、中国の新疆ウイグル自治区で起きている「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を無視していると非難する書簡を送付したとも報道されています。

また、昨年に実施された東京オリンピックにおいても、日本国内での新型コロナウイルス感染拡大が懸念される中で、トヨタ自動車がオリンピックに関連したテレビCMの放映を見送るなど、オリンピックを盛り上げるスポンサー活動によって、批判を浴びうるリスクを考慮した意思決定を行うようなケースも見られました。

北京オリンピックのケースで見れば、スポンサー活動を行うことが、オリンピアンを支援しているつもりであっても、人権侵害問題を容認していると捉えられる可能性があります。その結果、多くの人々を不快にさせてしまい、不買運動などビジネスに影響が生じることも考えられます。

一方で、外交的ボイコットに同調する形で、人権問題へ懸念を示す行動を取ることは、中国政府の主張を否定する動きとなり、中国でのビジネス活動において、影響が生じることも考えられ、非常に難しい舵取りを求められています。

オリンピックという世界的なスポーツの祭典のスポンサーになった企業に、これほど難しい意思決定を迫られることを想像していた企業がどれほどあったのでしょうか。オリンピックへのスポンサーに限らず、何かのイベントに協賛することは、世論から見るとそのイベント主体にも協賛すると捉えられてしまいます。出資有無の意思決定を行う際には、その観点でもリスク検討が必要になります。

スポンサーではない企業がオリンピックに向けて気を付けることは

スポンサー企業ではない場合も、オリンピック期間中は広告や発信内容に注意を払わなければ成りません。

たとえば、オリンピック出場選手の所属先、マネジメント会社、スポンサー企業が対象となる「個人スポンサー」がSNSやプレスリリースなどに、対外的に大会参加者の肖像を使用する場合は、確認書をルール40※事務局に提出することが求められています。ルール40の適用期間は、2022年1月27日~ 2022年2月22日となっています。
※ルール40:オリンピック競技大会等の参加資格条件となっている大会期間中の商業活動に関する規定(オリンピック憲章規則40付属細則3)

各国オリンピック委員会は、IOCのマーケティング方針に則り、オリンピックに関する知的財産を活用したマーケティング活動を実施しており、日本国内では商標法、不正競争防止法、著作権法等により保護されています。また、ガイドラインによると、東京オリンピックでは、組織委員会が管理する大会運営に関連する予算において、マーケティングによる収入が全体の約 90%を占めており、オリンピック開催の重要な資金源であるからこそ、厳格なガイドラインが制定、運用されているとも理解できます。

アンブッシュ・マーケティング

その中で、大きな懸念とされているのが、「アンブッシュ・マーケティング」です。
「アンブッシュ・マーケティング(ambush marketing)」は、”ambush”が「待ち伏せ」という意味合いがあり、いわゆる便乗商法などにも当たります。オリンピックやパラリンピックなどの大きな大会やイベントで、権利者の許可なくロゴを使用したり、開催イメージを流用してマーケティングに利用することを指します。故意でなくとも権利者の許可がないまま無断でロゴやスローガンなどを使用することもアンブッシュ・マーケティングに当たります。

オリンピックにおいて、アンブッシュ・マーケティングが懸念されるのは、前述のように知的財産を侵害するばかりでなく、オリンピックパートナーのマーケティング活動を妨害し、運営や選手の育成、強化のための資源調達にも大きな影響を及ぼしうるためです。

アンブッシュ・マーケティングで禁止されている活動は?

たとえば2022年冬期北京オリンピックではガイドラインにて以下のようなことが禁止されています。

  • オリンピックに関する知的財産を使用した広告やPR
  • オリンピックのパートナーであると誤解を招くような広告やPR
  • オリンピック日本代表選手団のパートナーであると誤解を招くような広告やPR
  • オリンピックをイメージさせるおそれのある広告やPR

出典:北京2022オリンピック冬季競技大会に関する知的財産保護·日本代表選手等の肖像使用について(日本オリンピック委員会)

オリンピックは、世界的にも大きな注目を集めるイベントです。だからこそ、この流れを利用したマーケティング活動は大きな成果に繋がりうるため、様々な企業が高額なスポンサー費用を支払い、その地位を獲得しています。そういった高額なスポンサー費用が、オリンピアンの安全が守られ、持てる力を発揮できる環境の実現に繋がっています。
だからこそ、アンブッシュ・マーケティングなど多くの禁止事項がガイドラインで規定されていることを知って頂ければと想います。

大規模な世界大会だからこそ配慮のある企業活動を

ここまでオリンピックに関連した企業のマーケティング・広報が気をつけるべきことを見てきました。最後にしっかりお伝えしておきたいのは、世間から注目を集めるイベントだからこそ、一挙手一投足が世間の注目を集める可能性が高まります。改めて、オリンピックに関連しうるマーケティング・広報活動を行う際には、そのリスクを検討し、慎重に行動に移されることをおすすめします。

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デジタルリスクラボ編集部

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