2021年5月にTwitterに「スペース」という音声会話機能が日本でも実装を開始しました。音声会話ができるSNSとしては2021年1月に日本の普及を開始したClubhouseをご存知の方も多いと思います。招待制のClubhouseとは異なり、参加しやすいTwitterのスペースですが、SNS上で会話することのリスクもあります。今回は、そのスペースの紹介とあわせて音声SNSで考えられるデジタルリスクを解説します。
Twitterに実装された『スペース』機能とは?
Twitterのスペース機能は、音声を使ってリアルタイムで会話できる新機能です。日本国内では2021年5月4日に公開されました。これまでのTwitterはテキストによる交流がメインであったが、この機能を使って音声で他ユーザーと交流できるようになりました。2021年1月から日本でも普及した招待制の音声SNS「Clubhouse」のTwitter版とも言えます。
『スペース』機能は誰が参加できる?
スペースは公開されていて、すべてのアカウントはリスナーとして参加できる
iOSやAndroidでTwitterのアカウントを持っていれば誰でもスペースに参加して、会話を楽しむことができます。スペースは一般公開されていて、フォローされていないアカウントも含めてすべてのアカウントがリスナーとして参加できます(ブロックされているアカウントは除く)。
非公開アカウントは使えない?
スペースを作成できるのは公開アカウントのみです。非公開アカウントではスペースを開始することはできません。ただし非公開アカウントでも、スペースの会話に参加したりリスナーとして会話を聴いたりすることは可能です。また、スペースを作成できるのはフォロワー数が600人以上を満たすアカウントになっています。
『スペース』では誰が発言できる?
Twitterのスペースでは、スペースを作成したユーザーを「ホスト」、ホストにより発言する権限を与えられたユーザーを「スピーカー」、ホストおよびスピーカーの発言を聴けるユーザーを「リスナー」と呼びます。
- ホスト:スペースの作成者であり、スペースでの発言、スピーカーへの招待、スペースの終了などの権限を持つ
- スピーカー:ホストに招待された、またはホストに参加を許可されたことでスペースでの発言する権限を持っているユーザー
- リスナー:発言はできないがスペースでホストおよびスピーカーの発言を聴けるユーザー
ホストはスピーカーを最大10名まで招待可能で、ホスト以外がスピーカーとして会話に参加するためには、ホストユーザーに発言のリクエストを送るか、スピーカーとして招待してもらうかのどちらかになります。
ホストはダイレクトメッセージを使って、スペースの外にいる他のアカウントが発言できるように招待することができます。また、リスナー側からもホストに発言のリクエストができるため、承認が通ることでスピーカーに権限を変えられます。
ただし、ホストが発言できる参加者を「スピーカーとして招待したアカウントのみ」に設定していた場合、ホストがDMで招待したスピーカーのみ会話に参加できます。この場合はリスナーが会話に参加することができないため注意が必要です。
また、ブラウザ版のTwitterでは、スピーカーとして会話に参加したり、ホストとしてスペースを作成したりすることはできないため、同様に注意が必要です(リスナーとして音声を聴くことは可能です)。
TwitterやClubhouseから考える音声SNSで起こるデジタルリスク
Twitterのスペースや、先に日本に上陸した「Clubhouse」を踏まえながら、音声SNSで起こり得るデジタルリスクを考察します。
①情報漏えい、意図しない社内情報の告発
Twitterアカウントは匿名性が高く、スペースには属性の分からない人が存在しうると考えることが賢明です。
口を滑らせて社内情報を話してしまうこと自体が、情報漏えい事案になるという危機意識を持つことが必要です。また、スペースでの会話はテキストなどのデータには残らないと考え、匿名アカウントを使用した従業員が社内情報を公開する恐れもあります。
発信情報が証拠として残りにくいメディアだからこそ、安易に情報発信してしまい得る関係者がいるかも知れないと考えなければなりません。
②話した内容がテキストで発信されて炎上する可能性もある
Clubhouseには、話したことを他のアプリで共有してはいけない、録音やメモの禁止などが規約で定められていました。しかし、発言した内容が発信される、漏えいしてしまっていたというケースがあります。実際に話した内容が発信されていてニュースとなった事例もあります。
一方で、Twitterのスペースでは、発言内容のメモの禁止や他媒体での発信の禁止等が明記されていません。Clubhouse以上に会話内容の漏えいリスクの高いメディアであると言わざるを得ません。リスナーは限定されているといえども、「ツイート」と同様に発言内容には注意を払うことが必要です。
③企業名を明かして利用している
Twitter にはプロフィール欄に勤め先を明記している方も多くいらっしゃいます。また、過去の情報発信内容から、所属企業が推測し得る方もいらっしゃいます。リスナーの中には、関係者や取引先が聞いている可能性もあります。
所属を明かしている状態での情報発信は、炎上の火種になりやすく、より注意が必要です。
企業が備えるべきリスクとは?
企業アカウントを使用する場合
一定の人気がある企業アカウントであれば、スペースの利用もできるでしょう。その際、気を付けなければならないのが発言の内容です。
Twitterのスペースでは、誰が聞いているのかわかりづらいこと、テキストでのやり取り以上にリアルタイムなコミュニケーションが求められ、不適切な発言のリスクが高まっていることを理解した上で、利用することをおすすめします。
従業員が個人アカウントで使用する場合
従業員が個人のプライベートアカウントでスペースを利用する際に最も注意すべきなのは、内部情報の漏えいです。
必要に応じて、企業は従業員への音声メディアのリスクを理解する教育や、インシデントを未然防止するためのガイドラインなどのルール作成なども検討しましょう。
スペースでTwitterルールに違反している利用を見つけた場合は?
スペース内でTwitterルールに違反していると考えられる場合、参加しているユーザーであれば、そのスペースをTwitter社に報告すること、また違反行為を行ったスペース内のアカウントをTwitter社に報告することができます。
スペースを報告する場合は、そのスペースを聞いているときに「…」をタップして「このスペースを報告」をタップすることで報告できます。また、スペース内で表示されるアイコンをタップし、[このスペースを報告] をタップすると、アカウントを報告することも可能です。
まとめ
Clubhouseを皮切りに、音声SNSも知名度が上がってきました。Twitterのスペースなどは、会話内容が表面的には記録には残りません。その分、気軽にコミュニケーションが取れるという利点があることは、間違いありません。
しかし、そこでの会話は、違うコミュニティで公開される可能性も大いにあります。また、通常のテキスト投稿とは異なり、リアルタイム性も高く不適切な発言に繋がりうる環境であることは、否めません。
しっかりとリスクを理解した上で、音声SNSを活用していきましょう。
参考
Twitterスペースについて(Twitterヘルプセンター)
Spaces(Twitter)
デジタルリスクラボ編集部
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