年々サイバーセキュリティの脅威は増大・巧妙化する一方、攻撃を受けた際の被害規模は大きくなっていることから、国や企業はそれらに対処すべく情報セキュリティを強化する必要性が高まっています。その中で「ホワイトハッカー」という言葉をニュースなどで見かけたことがある方も多いと思いのではないでしょうか。ハッカーといえば、悪意を持ってプログラムを操るイメージもあると思いますが、今回はその「ホワイトハッカー」について解説します。
ホワイトハッカーとは
ホワイトハッカーとはコンピュータやネットワークに関する深い知識を持ち、サイバー攻撃から企業のシステムを守る「ハッカー」のことを指します。
「ハッカー」という言葉を聞くと、他人の情報を盗み取る、といった悪いイメージを抱く方も多いかもしれませんが、もともとは行為の善悪に関するニュアンスは含まれていませんでした。ただ、企業のシステムなどに侵入していたずらに攻撃を加えたりして悪事を働く人を「ハッカー」と呼ぶことが増えたため、マイナスのイメージがついてしまいました。そのため、「ホワイトハッカー」は企業のシステムを守るために行動する善良なハッカーとして呼び名が付けられました。
ホワイトハッカーにできること
ホワイトハッカーの責務は企業のシステムをサイバー攻撃から守ることです。その責務を完遂するため、ホワイトハッカーの仕事は主に3つが中心となります。
- 情報漏えいを防ぐシステムの実装
- サイバー攻撃を防ぐための予測防衛対策
- 攻撃を受けてしまったときの対処と改善
「情報漏えいを防ぐシステムの実装」では、企業のネットワーク環境やアプリケーションなど運用形態を詳細に把握したうえで、セキュリティ性のシステム構築を行い、運用に繋げます。導入後はサイバー攻撃からシステムを守るために継続的な保守点検を行います。サイバー攻撃の手法は日々多様化しているため、こまめなシステムのアップデートがシステムを守るうえで重要になります。
「サイバー攻撃を防ぐための予測防衛対策」では、デジタルフォレンジックと呼ばれる調査と脆弱性の診断を行います。デジタルフォレンジックとは、システムやサーバー上に記録されたデータを収集し分析することで、サイバー攻撃を受けていないかの確認や、その兆候の発見をします。
万が一、サイバー攻撃が判明した際は、データから侵入源や被害の特定も行われます。脆弱性診断では、企業が所有するPCやソフトウェアなどネットワーク全体のサイバー攻撃からのリスクを診断します。ホワイトハッカーは診断結果をもとにシステムを守るための仕組みを提案します。
ホワイトハッカーが実際に活躍した事例
ホワイトハッカーは身近な存在となりつつあります。
日本でホワイトハッカーが活躍した事例として、漫画の海賊版サイトの摘発があります。
漫画の海賊版サイトはコミックスなどで掲載されている漫画を不正に無料でアップロードしているサイトで、出版社はその運営者を突き止めようとしますが特定に苦慮していました。そこでホワイトハッカーがサイトの記録から運営者を特定し、運営者の逮捕に繋がりました。
ホワイトハッカーに求められるスキル
企業のセキュリティ対策が注目されている昨今、ホワイトハッカーをはじめとしたセキュリティ人材の確保やベンダー企業との連携の必要性が高まっています。もし自社でホワイトハッカーを採用、あるいは育成をする場合、どのような人材が適しているのでしょうか。ここでは求められるスキルの観点からご紹介したいと思います。
まず、ホワイトハッカーになるための必須の資格というものはありません。しかし、業務の性質上、高度なIT・セキュリティの知識や対応スキルが求められることは確かです。そのため、IT・セキュリティの関する資格を保有していることで、そこからスキルや信用度を見ることもできます。
以下、ホワイトハッカーの業務やスキルに関連する資格の一例をまとめてみました。セキュリティ人材の育成や採用の際も参考にしてみてください。
- シスコ技術者認定(シスコシステムズ合同会社)
- 基本情報処理技術者(独立行政法人 情報処理推進機構)
- 応用情報技術者(独立行政法人 情報処理推進機構)
- 情報処理安全確保支援士(独立行政法人 情報処理推進機構)
- CEH 認定ホワイトハッカー(EC-Council International)
ホワイトハッカーの必要性は日に日に増している
IoT社会の実現が叫ばれ、インターネットが私たちの生活により身近になっていくにつれて、サイバー攻撃の脅威も私たちにより近づきつつあります。ホワイトハッカーは企業や個人の情報をサイバー攻撃から守るために、今後さらに必要とされる職業になるでしょう。
参考
・ホワイトハッカー|IT用語辞典(大塚商会)
・サイバー攻撃の最近の動向等について(総務省)
デジタルリスクラボ編集部
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