「SNSをやっているけどフォロワーが増えない」「ツイートしても反応が貰えない」といった悩みを抱えている企業のSNS担当者は多いのはないでしょうか。
昨今は多くの企業がSNS施策を行っているため、市場はレッドオーシャンです。群雄割拠の中で、自社のSNSに興味を持ってもらうことも簡単ではありません。今回はSNSで「バズる」ことについて内容を掘り下げ、企業アカウントを中心とした成功事例、バズらせようとした時に懸念されるリスクや対策をご紹介します。
「バズる」とは?
「バズる」という言葉は、英語の「buzz」に由来し、人々が特定の話題に対して注目している状況を指します。近年では、主にSNSで拡散・注目されている投稿や話題に対して、盛り上がっている状態を指す意味合いで使われることが多いです。
その基準は明確に定義されていませんが、たとえばTwitterでは、1万件以上のリツイートやいいねがされた投稿に対して使われる場合が多くあります。バズる投稿は短期で急激に拡散されます。
バズった企業アカウントの事例
①ほのぼのエピソードでバズった調味料メーカー
とある調味料メーカーはTwitterで「企業アカウントだから成果が無いとTwitterを辞めさせられる」という苦しい事情と同時に、「上司や同僚からフォロワーが40人もいてバズってるじゃん」と皮肉を言われたエピソードをツイートしました。これに対し、ユーザーからは「応援したくなる」「商品買います」「売り場教えて」などのメッセージと共にリツイートされ、フォロワーが1000倍まで増えました。現在ではキャンペーンを開催すると1分で対象商品が完売する、高い施策効果を生む人気アカウントとなっています。
②徹底した顧客目線のサービス提供を行う飲食店
とある外食店では徹底して顧客目線に立った発信をTwitterで行い、バズりました。
たとえば、自然災害が起こった際は被災地在住者を対象とした期間限定の半額キャンペーン、何らかの事情で満足に食事を取れない人を対象とした無料のキャンペーン情報をTwitterで発信した結果、数千件~数万件もの反響を得ています。顧客視点の企業としてのブランディングが成功し、固定のファンに愛される企業アカウントとなっています。
③デマ情報に対して適切な情報発信行った製紙メーカー
トイレットペーパーやティッシュなどを製造しているとある企業では、新型コロナウィルスの感染拡大によってトイレットペーパーが不足しているという情報が出回っている中で、Twitterに「各地でトイレットペーパーが不足するなど、一部報道されておりますが、当社倉庫には在庫が潤沢にございますので、ご安心ください!」というツイートとともに、在庫の山を写した画像を投稿しました。メーカーによるリアルな情報発信とインパクトのある画像によって、この投稿が瞬く間に拡散され、反響を呼びました。結果として、多くの方が製紙メーカーの企業名に触れ、認知度が向上したと考えられます。
バズマーケティングとは?
バズるSNSアカウントが増加する中で、「バズマーケティング」という言葉も普及しました。バズマーケティングとは、バズらせることを意図的に狙い、商品・サービスまたは企業そのものの注目を集めるマーケティング手法を言います。
バズマーケティングのメリット・デメリット
バズマーケティングのメリットは以下の通り3つあります。
・短期的かつ飛躍的な認知向上を期待できる
・企画次第で低予算でも大きな効果が生み出せる
・マスメディアに取り上げられ、より大きな拡散が見込める可能性がある
SNSでバズると、投稿内容が瞬時に何万人に露出されることもあります。SNSは投稿は、誰でもお金をかけることなく取り組むことが出来ます。そのため、広告出稿やチラシの配布など費用のかかる宣伝手法に比べると、バズった場合には低予算かつ高い露出効果を見込めます。
更に、バズった投稿はメディアに取り上げられることも多いため、Webメディアやマスメディアを通してさらに露出を高めることも期待できます。
一方、当然ですがデメリットも存在します。主なデメリットとして挙げられるのは以下の2つです。
・露出量が増えることでネガティブなコメントをされる可能性がある
・バズを狙った結果、ネガティブな投稿を促してしまう可能性がある
Twitter Japanによると、Twitterには月間で4,500万人もの利用者がいると言われています。大勢のユーザーがいると当然、意見の食い違う人が出てきます。バズることで、多くのユーザーに露出された結果、残念ながら一定のネガティブな口コミが生まれてしまうこともあるでしょう。
また、口コミの広がり方によっては、意図しない方向で企業やブランドが傷つけられたり、全く違うイメージを持たれたりする可能性があります。アメリカのとある大手飲食チェーンが、「自社についての思い出をツイートしよう」というキャンペーンを行ったところ、企業に関するネガティブな思い出が複数投稿されました。多くのユーザーに注目が集まること、バズることを目的に行った企画がレピュテーション低下に繋がる可能性もあります。
「バズる」と「炎上」
炎上との違い
多くのユーザーから注目を集める「バズ」は「炎上」とよく混同されることがあります。バズマーケティングに近い手法として炎上マーケティング・炎上商法といった言葉もありますが、「バズ」と「炎上」の違いは何でしょうか。
株式会社エルテスで毎月発表している「ネット炎上レポート」では、炎上の定義を以下のように取り扱っています。
“ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。“
「炎上」は、批判が集中している状態やネガティブな投稿が拡散されている状態を指します。
つまり、両者は多くのユーザーから注目を集め露出量が増えている状態を指しますが、「バズ」は好意的な反応が多く、「炎上」は批判が殺到している状態という点で相違があります。

炎上のリスク
炎上した場合、企業にはどのような被害があるのでしょうか。ここでは3つに分けて紹介します。
① 企業への不信感やブランドイメージの棄損
企業が炎上する経緯には、公式SNSによる不適切投稿や、従業員個人のSNS上での情報漏えい、異物混入など提供過程で生じた商品の欠陥などがあります。原因は様々ですが、それらを目にした消費者からは企業全体の信頼が低下してしまうことがあります。結果として、取引や採用機会の損失、上場企業であれば株価の下落など、マイナスな影響が出る可能性があります。
② 炎上に加担したユーザーは、ネガティブな印象を持ち続ける
企業の炎上に対して、一度批判的なコメントや拡散することで炎上に加わっていた場合、その企業や商品・サービスに対してネガティブな感情を持った事実が残ります。心理学の認知的不協和理論という観点から考えると、「一度否定したものを購入する」という事象に対して葛藤やストレスを感じるため、その製品・サービスの購入を諦め、他のものを選ぶという心理が働きやすくなることが考えられます。将来的にユーザーとなり得た潜在的なファンを炎上によって失うことも、リスクのひとつです。
③ アンチを生む
SNS炎上のもう一つの被害として、「アンチユーザー(アンチ)」を生むことが挙げられます。アンチは、たとえばTwitterで企業がツイートする度に企業を否定するようなリプライを送り付けてきたり、自身のツイートで企業批判を繰り返し行ったりといった行動を頻繁に行うユーザーを指します。
炎上した企業に対して不信感やネガティブな印象を持ってしまうだけではなく、継続的に批判を行うアンチになってしまった場合、その批判が再度炎上の火種となる可能性があります。

「SNSでバズる」前に対策すべき3つの運用ポイント
バズることは、多くのメリットがありますが、それと同程度に重要なのが、そのための事前準備です。投稿がバズってユーザーから多数の反響があっても、放置していればそれは一過性の現象に過ぎません。SNSでバズったところから反応したユーザーに対してアプローチをしかけることで、さらに購買行動などにつなげられる可能性があります。
ここではバズる前に決めておくべき事を3つ紹介します。
① SNS上の反応を収集できる体制を整える
SNSでバズった際は、膨大な数の反応が予想されます。投稿に対するリプライや、投稿を引用した投稿なども多く出てくるでしょう。そういった反応を収集できる体制を整えることで、今後のSNS戦略や企画に応用することができます。
投稿を収集するには多くの人員や時間が必要なため、リソースに限りがある企業などは、SNSの投稿を自動で収集するツールなどで代替することも可能です。

② バズった後のアクションを決める
バズった場合は「この商品どこで買えるの?」などといった企業や商品に対する問い合わせがリプライとして送られてくることがあります。多数のリプライの中に埋もれてしまうと、せっかくの顧客を逃してしまうため、有効な方法を3つ紹介します。
宣伝を連投
たとえば、Twitterではバズった投稿のリプライ欄に宣伝したいことをツイートしてつなげることができます。どれくらい宣伝ツイートを投稿するかは場合によって変わりますが、リツイート数やいいね数が、キリのいい数字(5,000リツイートや1万いいねなど)に達する度にツリー状に繋げて投稿する方法などがあります。
問い合わせ先を明記
プロフィール欄に問い合わせフォームのURLなどを用意するのも効果的です。事例で挙げた調味料メーカーも実際にバズったとき、「どこで売ってますか?」などという問い合わせがいくつか見受けられたそうです。拡散されるほど、企業側が問い合わせを見落とす可能性も増えるため、Twitterであればリプライ欄やアカウントのプロフィール欄などに問い合わせフォームなどの導線を貼り付けておきましょう。
ユーザーの反応に対してリプライやいいねをつける
ユーザーと積極的にコミュニケーションを図ることで、企業ブランドの向上やユーザーのニーズ把握に役立ちます。丁寧なコミュニケーションを続けることで、ユーザーがアカウントをフォローするなどして、今後の投稿やその企業自体に興味を持つ可能性が高くなります。
③ 万が一炎上したときの行動と意思決定フローをマニュアル化する
SNSでバズることは、良くも悪くも目立つことです。SNSは個人の感情も表れやすいため、ユーザーの反応の中にはネガティブなものや炎上しそうなものが見受けられる場合もあります。
ネガティブな反応、特に炎上のリスクがある投稿に関しては、冷静な対応が必要となります。どのような状況では静観を続けるのか、対応が必要なケースはどのようなものか、あらかじめ設定しておくことが大切です。
また、上司に判断を仰ぐ、社内で共有するなど、いわゆる「エスカレーションフロー」についても、基準や動き方などを明確に決めておきましょう。公式アカウントの運用ガイドラインやSNS対応マニュアルなどとしてまとめておくことをおすすめします。
まとめ
本記事ではSNSでバズることについて、基本的なことから事例やリスクについて触れてきました。SNSでバズることは、今まで接することのなかったユーザーと接点を持つことを意味します。そのような環境では、必然的に炎上のリスクも高まってしまいます。だからこそ事前にリスクを把握して対応に備えることが、求められますぜひ、日々のSNS運用を振り返り、リスクへの備えを確認してみてください。


デジタルリスクラボ編集部

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