企業にとって、広告・宣伝の手段で採用されることが多いキャンペーンですが、近年ではSNSでキャンペーンが行われることも多くなりました。今回はSNSでのキャンペーンについて、メリット・成功事例からそこに潜むリスクまで紹介していきます。
SNSキャンペーンを行うメリット
近年では多くの企業がSNSアカウントを持ち、広告・宣伝の一環としてSNSにおいてキャンペーンを行う例が増えています。なぜSNSにおいてキャンペーンを行うのでしょうか。
SNSでキャンペーンを行うメリットを2つ紹介します。
メリット① SNS利用者が多く、拡散力がある
SNSは10~30代を中心に非常に利用者が多く、拡散力が強みです。短い文章や1枚の写真が何千何万の人に見られる可能性を秘めています。さらに、ユーザーは気に入った投稿をシェアすることができます。シェア機能によってもたらされる拡散効果も非常に強力で、SNSで盛り上がった投稿が大手メディアに取り上げられることも多くなっています。
メリット② 少額の費用で始めることが出来る
SNSでのキャンペーンはリアルで行うキャンペーンに比べ、少額の費用で始めることができます。
例えば、キャンペーンを紙のチラシで告知する場合、まず必要な作業として、チラシの制作と印刷、それに伴う費用が発生します。さらに、新聞の折込チラシとして配る場合なら新聞広告費、街頭で配布するなら配布する人とその人件費がかかります。また、配布できる範囲や枚数によってコストは変わってくるでしょう。
一方、SNSの場合は、無料で作れるSNSアカウントさえあれば、キャンペーンと告知ができます。SNSは地域に依存せず、チラシの枚数などの心配もいりません。
キャンペーン企画時に考えるポイント
① どのSNSを使うか
まず、キャンペーンを行うSNSを選びます。SNSにはそれぞれに明確な特徴があり、それらに合ったキャンペーンを行うことが重要です。
Twitterは国内の利用者数が約4,500万人いるSNSで、140文字以内でテキストを投稿(ツイート)するのが主な機能です。投稿されたツイートは、フォローしているユーザーのタイムラインに関心度の高い順、もしくは時系列・新着順に表示されます。また、多くのユーザーが反応してる投稿やトピックを表示するトレンド機能もあります。他ユーザーの投稿をそのまま自分のアカウントで拡散できる「リツイート」機能は、ユーザー同士の気軽な投稿シェアを可能にしており、拡散性が非常に高いSNSです。
Instagramは10代20代を中心に3,300万人のユーザーを抱え、「インスタ」の略称で呼ばれるSNSです。テキストベースのTwitterに対して、Instagramの特徴は、写真や動画の投稿が中心で、視覚情報が重要視されます。綺麗な写真、オシャレな写真に対して用いる「映え」という言葉も、このSNSから生まれたものです。
Facebookは30~50代の男性が多く使うSNSです。一部ユーザー層では、ビジネスで利用されています。Facebookにはグループ機能があり、グループ内でのみ見られる投稿や、掲示板などを作ることができます。会員制などのコミュニティを作る際に使える実名SNSです。
LINE
LINEは日本で最もユーザー数の多いSNSです。メッセージ機能がメインのSNSであるため、他SNSに比べユーザーに広く見られることは少ないですが、タイムライン機能を活用することで拡散性も十分見込めます。また、「友達」機能を活用し、企業の公式アカウントを友達登録したユーザーに対して、メッセージによる情報発信や、自社・自店で使えるクーポンの発行などができるため、取り込んだユーザーへの個別アプローチに使われます。
② キャンペーン形式
キャンペーンを行うSNSが決まった次は、どのような手法でユーザーに参加してもらうかを考えます。
例えばTwitterでよくみられる例では、ユーザーにアカウントをフォローしてもらったうえで、告知投稿に「いいね」、もしくは「リツイート」してもらうキャンペーンがあります。また特定の話題について集めたハッシュタグをつけた投稿を促すものも見られます。
Instagramでもユーザーにアカウントをフォローしてもらい、投稿に「いいね!」をつけてもらう方法やハッシュタグをつけてテーマに沿った画像や動画を投稿してもらう方法があります。Instagramは、キャンペーンの告知で投稿する画像に、キャンペーンであることや、当選商品などキャンペーンに参加するメリットをわかりやすく記載することで、キャンペーンに参加しやすくする仕組みを作ることができます。
ユーザーの参加形式とあわせて、参加を促すアイディアなども検討しましょう。
③ 広告配信
SNSは広告を出すこともできます。自社のSNSアカウントをフォローしているユーザー(フォロワー)以外へのアプローチを強めたい場合は、キャンペーンを広告形式で出すことで、より多くの認知を取ることも可能です。費用をかけられるのであれば広告形式にすることも考えましょう。
企画の前に注意すべき点
キャンペーンを企画する前に、SNSキャンペーンの注意点やリスクを把握しておきましょう。
各SNSの規約・ガイドラインに違反していないか
各SNSにはそれぞれ利用規約やガイドラインがあります。
Twitterのキャンペーン実施についてのガイドラインによると、以下のようなルールが策定されています。
・複数アカウントを作成させない
・繰り返し同じツイートをさせない
・すべての応募を確認できるように、主催者の@ユーザー名を含めてツイートしてもらう
・Twitterルールに準拠する
Instagramの場合、プロモーションガイドラインとコミュニティガイドラインにキャンペーン実施に関する記述がみられます。
・コンテンツに誤ったタグをつけない
・いいねやフォロー、コメントに対して金銭や金券を提供することの禁止
FacebookはFacebook ページ、グループ、イベントに関するポリシーにてキャンペーンに関する禁止事項があります。
・ユーザーのタイムラインを使うことは禁止
これらの利用規約・ガイドラインを守らなかった場合、アカウントの凍結や消去の可能性もあるため、違反しないよう気を付けましょう。
景品表示法に違反していないか
日本には「景品表示法」という消費者が良い商品やサービスを自主的・合理的に選べる環境を守るための法律があります。その中に、景品類に関する規制や禁止事項を定めた「景品規制」というものがあるのをご存知でしょうか。
景品表示法上の「景品類」の定義としては、以下の内容が当てはまります。「景品類」に該当する場合は、すべて景品表示法に基づく景品規制が適用されます。
① 顧客を誘引するための手段としての景品
② 事業者が自己の供給する商品・サービスに付随して提供する景品
③ 物品・金銭その他の経済上の利益となる景品
※値引き、アフターサービス等は除く
特に来店や商品・サービスの利用・購入を対象として、金品などを提供するキャンペーンは「景品規制」の対象になり得るため、注意が必要です。詳細は消費者庁のWebサイトをご覧ください。
景品規制の概要(消費者庁)
炎上・クレームのリスク
SNSはコミュニケーションプラットフォームなので、ユーザーからのクレームも受けやすい環境です。中には投稿が不本意な解釈をされ批判を浴び、拡散・炎上する可能性もあります。
クレームや炎上は完全に防げるものではありません。クレームや炎上が起こった際は被害を最小化する対応が重要になってきます。然るべき対処をするために、まずは以下のような準備を検討しましょう。
① SNS運営マニュアルの作成
クレームや炎上はSNS担当者の不注意に対する投稿に寄せられることが多いです。
特に、過激な内容、コンプライアンスや政治、ジェンダーに関する投稿に対してはクレームが寄せられやすく、炎上する可能性が高まります。そういった事態を防ぐためにも、事前にキャンペーン方針やSNS運用時のマニュアルを作成し、投稿してはいけない話題などを明確に決めておきましょう。
また、投稿前に内容に問題がないかを複数人で確認することも有効です。
万が一炎上した際の企業の対応によって二次炎上が発生することもあります。クレームや炎上を想定した対応フローのマニュアルも作成しておくと良いでしょう。
② SNSのモニタリング
SNSでのクレームや炎上に対しては早期に適切な対応が必要となってきます。何度か言及したように、SNSの特徴はその拡散性です。拡散・炎上して手がつけられなくなる前に、適切な対応をすることが効果的です。
ただし、日々膨大に投稿されるSNSの投稿を1つ1つ見るのは時間や人的コストがかかります。モニタリングするリソースがない場合は、SNSの監視ツールの導入や専門会社への依頼なども有効な手段です。
SNSキャンペーンの成功事例
米袋デザインの枕カバーのプレゼント
とある包材メーカーがTwitterで米袋のデザインの枕カバーをプレゼントするキャンペーンを行いました。アカウントのフォローと投稿のリツイートをしたユーザーを対象に抽選を行う形式を取ったところ、米袋が描かれた枕カバーという斬新さで多くの注目を集め13日間で応募数8500件、7500人を超えるフォロワーの増加がありました。
店独自のハッシュタグとユーザーが魅せるSNS活用
とあるラーメン店では、Instagramでその店独自のハッシュタグを設定して、ユーザーへの投稿を促しています。ユーザーは「好きなトッピングを乗せた自分だけの一杯」というお題に沿って写真を投稿しています。お店側から投稿を呼びかけているのでユーザーが積極的に写真をあげています。
SNSキャンペーンを成功させるポイント
各SNSの特徴を理解し、それに合ったキャンペーンを行う
先にも述べましたが、SNSにはそれぞれ異なるユーザー層と特徴を持っています。各SNSについての特徴を把握しないままキャンペーンをしてもユーザーに反応してもらえないということもあります。それぞれのSNSに合ったキャンペーンを企画しましょう。
ユーザーを理解する
ユーザーがどんな情報を求めていて、どんな情報を求めていないのか。この視点も大事なポイントです。ユーザーが求めていない情報には当然反応してもらえませんし、ユーザーが嫌悪感を抱く情報や言い回しなどをした場合はクレームや炎上に繋がります。ユーザーからどんな情報を求められているのか、どんな情報の価値が高いのかといったことを考える必要があります。普段からユーザーの意見を拾う、積極的にコミュニケーションを取るなどといった事が重要になります。
もしもの時の対策を
先ほども述べましたが、SNSでは批判やクレームが集中する可能性があります。きちんとユーザー側に寄り添う対応をすれば致命傷にはなりません。日頃からリスクを考え、SNS監視ツールやダブルチェックなどの対策をすることが重要です。
まとめ
キャンペーンにSNSを使うことは、ユーザーの認知を広げやすくするだけでなく、ファンの獲得にもつながるので非常に効果的です。しかしその反面、法律やガイドライン、炎上のリスクに注意が必要です。リターンとリスクを正しく把握してキャンペーンを行えば、すばらしい成果が期待できるでしょう。
参考
2021年6月更新! 12のソーシャルメディア最新動向データまとめ – ソーシャルメディアラボ(株式会社ガイアックス)
デジタルリスクラボ編集部
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