企業や個人が世間から注目を集めるマーケティング手法の一つに、「炎上マーケティング」があります。「ネット炎上」は被害の大きさから一般的に避けるべき事象として認知されていますが、その注目度を逆手に取って多くの興味関心と認知を獲得するのが「炎上マーケティング」です。今回は、その事例とリスクについて解説します。
炎上マーケティングとは
炎上マーケティングとは、意図的に批判される事柄を作り出し、炎上状態にするマーケティング手法です。「炎上商法」「炎マ」などの名称でも呼ばれています。
コンテンツを炎上させることで、メディアやまとめサイトにも取り上げられることで、多くのユーザーに認知されるきっかけを作り、注目を集めることが出来うる手法です。
しかし、炎上というのは批判が殺到している状態です。意図的とはいえ、批判を受けていることは変わらず、商品やサービス、企業のブランドイメージの低下や、そもそも炎上マーケティングを行っていること自体に、外部にネガティブな印象を与える可能性があります。
炎上とは?
「炎上」とは、「ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」「特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる」状態である
参考:情報通信白書令和元年版(総務省)
炎上マーケティングの事例
意図的に批判される事柄を作り出し、世間の注目を集めようとした炎上マーケティングの事例を2つ紹介します。
事例1 :チョコレート菓子販売会社
一つ目はチョコレート菓子を販売する会社Aの炎上マーケティング事例です。
A社は、自国の国旗を模したチョコレートパッケージを他国の国旗のデザインに変更するという炎上マーケティングを行いました。その新パッケージには批判が殺到したものの、これにより人気が低迷していたA社のチョコレートに注目が集まりました。さらにA社は、一夜でパッケージデザインを旧デザインに戻し、注目を浴びるためのジョークであったことを発表しました。一時的に批判されたが、短期間で国民の関心を集め、結果としてブランドの認知度アップやファンの獲得につながった事例です。
事例2 :マスコットキャラクター
二つ目はマスコットキャラクターの炎上マーケティング事例です。
あるマスコットキャラクターはTwitterで差別や名誉毀損と取れる発言を度々行い、プチ炎上を起こしていました。批判の度に、「すまんべえ」と謝罪することから注目を集め、フォロワー数を伸ばすことに成功していました。しかし、戦争に関する政治的発言の投稿がSNS上で大きな波紋を呼び、そのマスコットキャラクターを運営する行政に抗議が殺到。結果としてTwitterアカウントは停止に至りました。
炎上マーケティングに潜むリスク
多くの注目を集める炎上マーケティングは、成功すればフォロワーなどファンを増やすことに繋がりますが、先ほど紹介したマスコットキャラクターの事例のように、リスクと常に隣り合わせであることを忘れてはなりません。
では、炎上マーケティングにはどのようなリスクがあるのでしょうか。
即座に活動の停止を余儀なくされるリスク
・炎上拡大から再起不能となる
多くの人が間違った思想・言動と判断してしまう発信は、消費者の不買運動や既存顧客の取引停止を誘発させ、ビジネス自体の存続危機につながってしまう可能性があります。
また、炎上後の対応を誤ることで、二次炎上の発生も考えられます。情報が拡散し、炎上がコントロール出来ない規模に広がってしまったときに打ち手がなくなってしまうリスクを理解しておきましょう。
・法的に訴えられる可能性
炎上を引き起こすための過激な発言や行動は、時として法に触れる行為に繋がります。
たとえば、誰かを意図的に陥れるような言動、間違った情報の拡散が、信用毀損罪や名誉毀損罪、業務妨害罪などに繋がり、損害賠償請求まで発展する可能性もあります。また、コンテンツの内容が差別や誹謗中傷にあたってしまい、訴えられるケースも考えられるでしょう。(法に触れていなくても、誰かを傷つける行為は原則として行うべきではありません。)
長期的なブランド育成に与えるリスク
・炎上マーケティングを行った過去は消えない
炎上(批判を受けたこと)は消えない過去となって企業や個人につきまといます。
ネガティブな情報がインターネット上に残り、デジタルタトゥーとして採用など企業活動において悪影響を与えてしまう可能性があります。炎上マーケティングの結果がどうであれ、炎上とは批判を受けることであり、基本的にはマイナスな出来事であることへの理解が必要です。
・「アンチ」を生んでしまう(今後の炎上火種になる)
炎上マーケティングは、批判を誘引する行為であり、当たり前ですが、ユーザーに不快感を与えます。
そのような積み重ねから、部分的なマーケティング活動への不快感だけではなく、企業自体に不快な感情を持つユーザー、いわゆる「アンチ」を生み出してしまう可能性があります。そのような「アンチ」は、企業活動に対して継続的に批判を行い、炎上の火種となってしまう可能性が大いに考えられます。
まとめ
炎上マーケティングは、大きな成果を得る可能性もありますが、相応のリスクがあります。場合によっては、いままで積み上げてきた消費者との信頼関係を壊しかねないものです。
炎上は批判が殺到している状況であることを理解頂き、長期的な視点を持って、マーケティングコミュニケーションに取り組むことをお勧めします。
参考
情報通信白書令和元年版(総務省)
デジタルリスクラボ編集部
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