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インシデント発生を抑止する「割れ窓理論」の取組み

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企業や行政が実践するリスクマネジメントの取組に「割れ窓理論」という考え方があります。今回は、割れ窓理論の取組とその効果を紹介しながら、デジタルリスクマネジメントにおいて明日から活用できる割れ窓理論に沿った取り組みを紹介していきます。

そもそも「割れ窓理論」とは?

「割れ窓理論」という言葉をご存知の方も多いのではないでしょうか。

「割れ窓理論」とは、「窓ガラスが割れた状態のままだと、建物の管理が行き届いていないことを示し、更なる窓ガラスの破壊を助長する」という考え方を指します。別名では、ブロークンウィンドウ理論(Broken Windows Theory)と呼ばれ、環境犯罪学の領域です。小さな犯罪が大きな犯罪に繋がるという、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱した理論です。

割れ窓理論の考えに沿って、様々なリスクマネジメントの取り組みがなされていて、犯罪を抑止することや不適切な行動を抑止することに成功した事例があります。今回は、具体的な取り組みを2つ紹介します。

割れ窓理論を応用し町の犯罪率が減少

1980年代のニューヨークは、世界でも有数の犯罪が多発する都市でした。この状況を改善しようと、1994年にニューヨーク市長に就任したルドルフ・ジュリアーノ氏が「割れ窓理論」を応用して、犯罪の減少を図りました。具体的に行った政策はタクシーや地下鉄、街中に点在する落書きを消すことでした。

落書きという小さな犯罪をニューヨークは許しているというイメージを変えようとしたのです。この美化作戦は功を奏し、就任から5年間で犯罪率は大幅に減少しました。
この事例は日本でも採用されており、複数の行政で割れ窓理論の考えに沿った取り組みがなされています。

「割れ窓理論」実践運動(京都府ホームページ)
東京港区が落書きゼロへ対策強化 「割れ窓理論」のNYを参考に(産経ニュース)

ディズニーランドの「あの仕事」は割れ窓理論に基づいている

東京ディズニーリゾートでも、割れ窓理論に基づいて、取り組みが行われています。

ディズニーリゾートに行った経験のある方は、少し園内の様子を思い出して頂きたいのですが、地面にゴミが落ちている様子を見かけたことは少ないのではないでしょうか。なぜそのような環境を維持できているかというと、キャストとよばれるスタッフがこまめに清掃を行っているためです。これには、夢の国では来園者に心地よく過ごしてほしいというだけではなく、来園者のマナー向上も意図して行われています。

少しご自身の視点で想像してみてください。原則として、ポイ捨てはマナー違反です。
しかし、ゴミで溢れている道路には、躊躇なくゴミを捨てることや心理的な罪悪感が薄れてしまうのではないでしょうか。それは、ご自身の部屋でも同様かもしれません。
逆に、ゴミが何一つ落ちていない、整理整頓されたところにゴミを捨てることは、躊躇してしまうのではないでしょうか。まさに、その心理的なハードルが割れ窓理論と大きく関係します。小さな不正を許してしまうことが、新たな不正を許してしまい、その中に大きな不正も含まれていることを示します。

「逆割れ窓理論」という考え方

このような小さな不正を減らす行動を行うことで、新たな不正や大きな不正を減らそうという考え方は、「逆割れ窓理論」とも呼ばれています。

このように、「割れ窓理論」に基づいた逆割れ窓理論による環境の整備は、行政と市民、ディズニーランドと来園者双方にメリットのある政策と言えるでしょう。企業でいえば、この理論を応用して職場環境を整備することで、職場秩序の改善だけでなく従業員の生産性向上にも一役買うことでしょう。

デジタルリスクマネジメントへの応用

私達がサービス提供を行うデジタルリスクの領域でも割れ窓理論に基づいて取り組む企業もたくさん存在します。それらの企業は、SNS炎上や内部不正など大きなインシデントを事前に防ぐために、小さなインシデントやヒヤリハットに目を向け、対策を行っています。

SNS炎上を抑止する割れ窓理論に沿った取り組み
・公式SNSアカウントの発信に対する反応のモニタリング
・関係者による社内情報の発信のモニタリング

内部不正を抑止する割れ窓理論に沿った取り組み
・シャドウIT、フリーWIFI接続などの情報セキュリティポリシー違反への取締

インシデントの発生には必ず原因があり、小さな不正を許すことが、それらのインシデントに繋がる可能性も大いにあります。
ぜひ一度、割れ窓理論の考えに沿って、インシデントを誘発しうる小さな不正を許しているような環境になっていないか、自社の取り組みを見直してみてください。

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デジタルリスクラボ編集部

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