コンプライアンスを守ることは、企業活動を継続的に行っていく上で、必要不可欠なことです。実際にコンプライアンス違反をきっかけに企業が倒産してしまうケースが、年間で200件以上も報告されています。(帝国データバンク調べ)
一方で、デジタル化によって、コンプライアンス違反に関連する環境も変化しつつあります。そのような背景に合わせて、企業がSNS時代に行うべきコンプライアンス対策をまとめました。
コンプライアンスとは
そもそもコンプライアンスとは、どのようなものを指すのでしょうか。
コンプライアンス(compliance)は、法令遵守と訳されます。
注意したいのは、ここでの法令遵守は、法律だけでなく、より広範な範囲を指すということです。広範な範囲とは、明文化されていないが、社会的なルールとして認識されており、遵守すべきものと考えられているものを含みます。具体的には、倫理観や道徳観、業界別に設けられた規則などを指します。このような背景から、企業によっては、コンプライアンスを法令等遵守と定義している企業もあります。
実際に見られるコンプライアンス違反の事例は、様々な不祥事があります。
上場企業が不適切な会計処理を行い、上場廃止、倒産に追い込まれる事例や、金融機関による不適切営業、食品会社による賞味期限切れ商品の活用などです。
また、パワハラやセクハラ、反社会的な勢力との繋がりなどの社会的なルール違反が社会問題として取り上げられ、謝罪に追い込まれるケースも発生しています。
そして、そのような不祥事によって、企業や個人の評判が著しく低下することになります。
コンプライアンス違反と発覚の影にあるSNSの影響
近年、SNSを通じてコンプライアンス違反が問題となるケースが目立っています。大きく分けると3つのケースに整理することが出来ます。SNS上で告発が行われるケース、SNSを通じて発覚するケース、SNS上でコンプライアンス違反が行われてそれが指摘されるケースです。
SNS上で告発が行われるケース
被害者が社内や取引先からのパワハラ・セクハラ、不当な要求を告発するケース
社内の上司からセクハラを受けていると感じている社員がSNS上でセクハラの実態を告発。社名や上司の名前まで公表。社内のコンプライアンス部門なども気づかぬうちに、SNS上で話題を呼び、マスメディアでも取り上げられる。メディア対応なども後手に回り、大きなブランドイメージの低下に繋がり、採用活動などに悪影響が見られた。
被害者の家族や友人が、不当な労働環境や人事異動を告発するケース
夫婦間の会話として、夫が妻に不当な労働環境の愚痴を何気なくこぼす。あまりに不憫に思った妻がSNS上で発信。第三者からの発信であり、一部不確かな情報も含まれていたが、事実確認のないままSNS上での発信が独り歩き。メディアにも取り上げられ、世論は企業への風当たりが厳しくなり。大きな社会問題にも繋がった。
SNSを通じて発覚するケース
反社会勢力との繋がりがSNSにアップされた写真で発覚するケース
有名経営者が反社会勢力と一緒に写った写真をSNSにアップされる。友人なのか、ファンサービスで写真撮影に応じたのかなど、関係性が不明瞭なまま、噂だけが独り歩き。経営者本人や企業側は関係性を否定するも、風評被害に繋がった。
有名人の来店など、顧客情報を漏洩していたことが家族のSNS投稿などから発覚するケース
自身が働いているレストランに有名人が来店したことを、家族間の会話として母親が娘に話す。娘は、SNS上でその情報を投稿し、たくさんのリアクションを獲得。
その情報がネットメディアに取り上げられ、更に一緒に来店した人物の推測や、レストラン名、投稿者の特定がSNS上で実施。情報漏えい元がレストランの従業員であることがわかり、批判を浴びる。
SNS上でコンプライアンス違反を行われて指摘されるケース
誤って機密情報の写った画像をSNSに投稿するケース
テレワークのために機密情報を家に持ち帰っていたため、家族で撮影した写真に顧客情報が映り込み、気づかずSNSに投稿。友人から指摘を受け、投稿を削除するものの既に複製されており、まとめサイトなどで拡散され、情報漏洩となった。
誤ってインサイダー情報などをSNSに投稿するケース
自身が関る開発中の新サービスに関する内容をSNS上で投稿。本人は内容をぼかしたつもりだったが、プロフィールから所属企業が推測できてしまった。その情報漏えいを受けて株価に影響を与えるほどの事態となり、企業の情報管理体制が指摘されることとなった
今までも居酒屋などでコンプライアンス違反になるような情報漏洩が起きていた可能性はありますが、それらの多くはその場限りで後に残ることは少なかったのではないでしょうか。
しかしSNSで投稿された情報は記録として残り、デジタル空間上でたくさんの人々がアクセスすることが出来ます。だからこそ、今までとは異なるコンプライアンス対策が必要になってきます。
SNS時代のコンプライアンス対策に必要なこと
今後は、SNS時代に合わせたコンプライアンス対策を構築しなければなりません。
SNS時代に合わせたコンプライアンス対策のポイントは、従業員へのコンプライアンス教育とクライシス対応の事前準備です。
従業員へのコンプライアンス教育
「例」でも紹介しましたが、SNS上での情報漏洩などは、従業員本人だけでなく、従業員の家族や友人から情報が漏れる可能性もあります。しかし、従業員の家族や友人まで、コンプライアンスの教育を行うことは、現実的ではありません。防ぐことが出来るのは、SNSに投稿しなくとも、家族や友人を通じて、SNSに投稿され、コンプライアンス違反や違反の発覚に繋がることの理解を深めて、従業員に自分ごと化してもらうことです。
今や誰でもSNSやネットを通じて情報拡散が可能ですが、誤った使い方によって起きるリスクについては、まだまだ理解されていません。そのために、従業員が遵守すべきSNSポリシーの策定、ネットやSNSに関連したリスクに関する研修を行うことを推奨します。
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クライシス対応の事前準備
コンプライアンス違反が発覚した場合の対応も、事前に準備しておく必要があります。
SNSやネットを通じて、情報は驚くべき速さで拡散するため、適切に対処するための準備を事前にしていないと対応が後手に回ります。その結果、対応のまずさや遅れを批判されてしまうケースも多く見られます。
リスク投稿を早期に発見するための取り組みとしては、継続的なSNSのモニタリングが有効です。
また、リスク発見後の初期対応のために、どの部署が担当するのか、意思決定者は誰なのかといったエスカレーションフローや、対応方針で企業として考慮するポイントは何か、などを事前に整理しておくと、有事の対応がスムーズになります。
最後に
これからは、SNS時代に合わせたコンプライアンス対策が必要になります。
従業員への教育や、リスクの早期検知体制、インシデント発生時の対応フローなど、事前の対策が不十分だと思われる場合には、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2019年度)」(帝国データバンク)
デジタルリスクラボ編集部
デジタルリスクラボは、株式会社エルテスが、デジタルリスクから「企業成長」と「個人のキャリア」を守るためのメディアとして運営。株式会社エルテスが提供するデジタルリスク対策サービスは、こちら。