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デジタル時代の新しいリスク インフォデミックとは?

インターネットの普及で、私たちはリアルな繋がりの情報だけでなく、Web上に掲載された情報を見ることが出来ます。Web上に掲載された情報は、誰でも簡単に見ることが出来るという面で、人間の情報取得方法の画期的な変化であったと言えます。その後、SNSが発達し、情報の発信のハードルは更に下がります。誰でも簡単に自らの想いや発見を世界中に発信することが出来るようになったのです。そのような環境下で起きた新しいリスク「インフォデミック」について、今回はご紹介します。

インフォデミックとは

インフォデミックとはインフォメーション(情報)エピデミック(流行性、伝染)を掛け合わせた造語です。インフォデミックは、情報の伝染と訳すことができ、大量の情報が溢れ、混乱が生じる現象を指します。

実はインフォデミックという表現は、2003年に流行したSARSが流行した際に、一部で活用された言葉です。感染症の流行や自然災害の発生時に、正しい情報も不確かな情報も大量にWeb上を行き交うことで、私たちは正しい情報を得にくい状況が生まれてしまいます。その結果、不安や恐怖心が増幅され、さらなる拡散に繋がるような一種の混乱状態をインフォデミックと説明します。

WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスに関する2月2日のレポートで、「新型コロナウイルス(COVID-19)の発生には、正確な情報とそうでない情報がネット上にあふれるインフォデミックが伴った」と述べています。実際に英文で、WHOがmyth(作り話等を意味する)を信じないようにと情報発信を行っています。

今回の新型コロナウイルスに関する「お湯がウイルスを死滅させる」「トイレットペーパーがなくなる」などの不確かな情報をSNSやメディアで目にした人も多いと思います。

まさに、そのような情報の大流行がインフォデミックです。

なぜインフォデミックが生じているのか

インフォデミックが今生じている大きな理由は、複数あります。

約100年前、大きな被害が発生した関東大震災後にもデマ(不確かな情報)が拡散されました。関東大震災後の多くの人々が家を失い、混乱が生じている状況で、「朝鮮人が襲ってくる」という不確かな情報が拡散し、それらを知った民間人は、武装し、朝鮮人や朝鮮人と間違われた人々を殺害してしまう事件が起きてしまったのです。

当時は、現代以上に正しい情報の取得が難しい中で、不安や恐怖心から混乱状態となり、そのような痛ましい行動に繋がったと考えられます。しかし、今回の新型コロナウイルスという不安や恐怖が生じる状況下でも同様です。つまり、未曾有の状況を前にすると、人間の習性上、不確かな情報の拡散の可能性が高まると言えます

そのような状況に輪をかけるように今回インフォデミックが発生しているのは、テクノロジーの進歩も大きく関係しています。情報は、リアルなコミュニケーションや手紙、マスメディアを通じて伝えることが出来ましたが、近年のWeb(とりわけSNS)の普及で、誰でも簡単に情報を発信することが出来る。誰でも簡単に情報にアクセスすることが出来ます。

総務省「平成29年度版情報通信白書」によると、世界のデータトラフィック量は10年で6倍以上増大が予測されています。

世界のトラヒックの状況についてみると、米Ciscoによれば2015年から2020年にかけて年平均成長率22%(5年間で約2.7倍)でさらに増加していくことが予想されている。2020年には1か月あたり194エクサバイト(EB)、年間にすると2.3ゼタバイト(ZB)に達する。特に、モバイルデータは年平均成長率53%(5年間で約7.8倍)で増加し、全体の伸びを牽引していくことが予想される。
引用:平成29年度版情報通信白書

デジタル化が進んだことで、「情報を生み出しやすくなっている」、「情報が一度に不特定多数へ拡散出来る環境が整っている」、「情報を容易に複製することが出来る」という要素が今までにないインフォデミックに繋がっていると言えます。

新型コロナウイルスにおけるインフォデミックの例

実際には、どのようなインフォデミックが発生しているのでしょうか。今回の新型コロナウイルス感染拡大期における特徴的なインフォデミックの例を紹介します。

海外の新型コロナウイルスに関する情報の拡散

新型コロナウイルスは、日本だけで起きているものではありません。世界で発生しており、世界中の医療チームが研究にあたっており、情報発信がなされています。

例えば、SNS上では現在、「緑茶が新型コロナウイルスの予防に効果的」という内容の情報が拡散されています。そこには、インドの研究チームの論文などが掲載されているのですが、論文は英語です。自らが1次情報を確かめることなく、1次情報が添付されているので確かな情報だろうという考え、拡散が生じている可能性もあります。

仮に、「緑茶が新型コロナウイルスの予防に効果的」であったとしても、前提条件などの様々な情報が抜け落ちて、一部だけが和訳されて、SNS上で拡散しているとも言えます。もちろん、1次情報を確認した上で、拡散を行うケースもありますが、確認せずに軽い気持ちで拡散をしてしまうケースもあると考えられます。

インフォデミック下で正しい行動を取るために

最も重要なことは、様々な情報で溢れる中で、信頼性のある情報機関が提供している1次情報を取得するということです。

先程も紹介したように、WHOも今回の新型コロナウイルス下でのインフォデミックの発生には警鐘を鳴らしており、対策を講じています。公式HPを始め、TwitterやInstagram、Weibo(中国版Twitter)といったSNSアカウントを通じてWHOの持つ正確な情報を積極的に発信しています。

日本語版の特設ページも作成されています。職場での対策方法など、グラフィックを活用して、分かりやすく情報発信を行っています。

その他にも、首相官邸や厚生労働省などの公式発信情報を確認することもおすすめです。

だが、公式機関だからといって、鵜呑みにしてはならない

一点注意しなければならないことは、公式機関の発信であっても、その公式機関の専門領域の発信でない場合は、しっかりと1次情報を確認することをおすすめします。
実際に今回の新型コロナウイルスの予防に関して、愛知県警が公式Twitterで誤情報を発信したという事件も発生しています。

実際に公式機関の発信は非常に大きな影響力を持ち、Twitter上の情報拡散も急激に広がりました。公式機関のSNSアカウントの中の人は、自らの情報発信の意味をしっかりと考え、発信内容を精査する必要があります。

まとめ

SNSは情報を瞬時にシェアすることができるメリットがある一方で、不安や心配も瞬時に広がる側面も持っています。新型コロナウイルスという見えない敵への不安や恐怖がある現在では、その側面はより強くなってきています。

お互いの不安を分かち合うこともできるのはSNSの魅力のひとつですが、自分の不安な思いに都合のいい情報だけを無意識に選んでしまっている可能性もあります。誰もが発信者として情報をシェアできる時代だからこそ、事実(ファクト)を見極める重要性は高まってきています。

インフォデミックが起きている状況はもちろんですが、平時でもあっても、膨大な情報に踊らされず、信頼できる機関やメディアを自分の考えで選び、チェックしていくことが正しい情報をつかむための第一歩といえるでしょう。

見えない脅威だからこそ、見えるファクトを通じて自分自身の身を守ることが大切です。

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デジタルリスクラボ編集部

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