研究員コラム

映画「サマーウォーズ」からみる、細田監督が10年前に構想したデジタル社会

みなさん、夏になると思い出すこと、やりたくなることありませんか?例えば、サザンの曲だったり、高校野球を見に行きたいだったり…私は、細田守監督の「サマーウォーズ」を無性に見たくなります。今回は、「サマーウォーズ」から見るデジタル化社会について、考察してみたいと思います。

公開から10年、改めて見るサマーウォーズ

みなさん、サマーウォーズの公開が2009年ということご存知ですか?

たぬきくん
たぬきくん
10年前、映画館で見たときは、夏希先輩にただただ憧れていた映画でした。(たぬきくん、当時17歳)
「募集定員は1名なの」というセリフを言われたいとどれだけ想ったことか…

さて、今回改めて見直してみると、デジタルとリアルが融合したときに、どんな世界がやってくる可能性があるのかを描いた映画であり、示唆に富むものではないでしょうか。

一方で、長野県の古き良き家族の姿、高校野球を描き、昔ながらの日本の夏の風景を対比として、織り交ぜている部分も非常に印象的です。少し、サマーウォーズの世界を覗いてみたいと思います。
たぬきくん
たぬきくん
ネタバレしないようにね!

現実世界と連動しているOZの世界

サマーウォーズは、OZという仮想空間を描き、この世界は現実の世界とリンクしています。

現代のSNSの世界も一種の仮想空間ではありますが、性質は大きく異なっています。

「サマーウォーズ」で登場するOZ(仮想世界)は、分身となるアバターを持ち、現実世界と変わらない生活をネットでも送れるというものです。特徴的なのは、現実の職業と同じ権限をアバターが持つことができます。劇中でも、消防士が自身のアバターからオズの世界で緊急発動令を発令したりしています。大統領であれば、核爆弾のスイッチをOZのプラットフォームを通じて押すことができるという発言もあります。

仮想空間でありながら、現実世界と同様のなりすましが許されない世界が成立しています。

たぬきくん
たぬきくん
OZは、多面的な自己を表現できる現代のSNS空間とは異なり、身体が拡張されているような世界感なので、現代の仮想空間とは少しニュアンスが異なるかも。
ぺがさす上司
ぺがさす上司
たぬきくん、そのとおり!
OZは、基本的に1ユーザーに対しては1アバター(1アカウント)であることが前提で、且つ現実世界との整合性が必要。だから、私がたぬきくんに成り代わって、女の子にアプローチしよう!という悪質な行為はできないんだよね…(私が代わりにアプローチしてあげたほうが、成果出そうだけどね!)
つまり、仮想空間内であっても「私は私」ということがOZの絶対条件であるってところが、複数のアカウントを自由に作って色んな自分を表現できる現代の仮想空間とは少し異なるよね。
ただ、国境や宗教など、物理的・身体的な障壁はなく、様々なユーザーとリアルタイムでコミュニケーションを持つことができるということは共通の特徴だよね!

OZの世界の技術は先進的?

OZは、高度なセキュリティで厳重に守られており、システム保守も作業ベースで切り取られ、業務委託されており(劇中で主人公たちがシステム保守のアルバイトを請け負っているシーンが登場)、アバターに合わせた権限付与がなされていることが想定されます。

たぬきくん
たぬきくん
この仕組を中央集権型で作っているとすれば、物凄いデータとなるので、どのように成立しているのか興味深い。もしかすると、非中央集権型のブロックチェーンのような仕組みを10年前から構想しているなら、細田さん天才ではないか…
技術的な先見性もさることながら、この映画を通じて、感じたことは大きく3つあります。

繋がりの変化、ファクトの重要性、そして、時代にあったスキルの必要性です。

デジタル世界による繋がりの変化

この映画のキャッチコピーは、「つながりこそが、ボクらの武器。」「これは新しい戦争だ。」でした。

親類の集まり、栄ばあちゃんが使う武田家臣の好という過去からの繋がりが描かれている一方で、ラブマシーンとの闘いの場面では、ドイツの少年などの仮想空間でしか繋がらない仲間とともに行動するシーンが描かれています。

たぬきくん
たぬきくん
今昔のつながりのあり方が共存しているのも、興味深い!
新時代の繋がりを対比しながら、表現しているのではないでしょうか。
また、繋がりの中身も変質しているように感じます。同じ時間を過ごしたことよりも、同じ目的を持っているかが重要な時代であり、目的が繋がりを作り、プロジェクトが終わると解散する社会の到来を予感させます。

陣内家に突然やってきた主人公も、陣内家の人々と同じ目的を共有後、陣内家を動かす重要な役割を果たすようになります。

結末は残酷であった、見えなくなった事実

一方で、デジタルに頼るがあまりに、クライシス事象に脆い社会システムの露呈を劇中に描いています。システムの誤作動や物流の停滞など…

栄おばあちゃんは、この状況に対して、
「これはあれだね、まるで敵に攻め込まれているみたいじゃないか。下手をしたら、死人が出るかもだね。」と言っています。

この言葉は非常に残酷だなと感じています。

たぬきくん
たぬきくん
栄ばあちゃん、、、映画を見た人には、分かるはず!

デジタルを信用しすぎたために、リアル(ファクト)を見ることをせずに、気づかぬうちに大事な人が命を落としてしまうという姿も描かれています。

時代にあったスキルの必要性

主人公がOZの世界をシステムに障害を起こしたとして、指名手配されます。逮捕の瞬間、劇中の警察官は、「罪状は、えーと…」というセリフを残します。

その犯罪がどのような影響を世界に与え、どのように技術で行われたのかを理解しないまま、指名手配されているから逮捕しようしているのです。

少し大げさではありますが、Web上での犯罪が多発する社会に変わるのであれば、警察官でさえも求められるスキルは大きく変化するのです。

一方で、自衛隊所属の陣内理一は、過去の戦闘能力の高い自衛隊の姿から、ITスキルの高い姿が描かれており、キャッチフレーズのように「新しい戦争」に適応した自衛隊員の姿として、描かれているのが印象的です。

いかがでしたでしょうか。作品は、人によって感じ方は様々です。10年前は、夏希先輩みたいな人に会いたいなという思いしか抱かなった作品をこのように違う角度で整理してみるのも面白いものです。

この記事を書いた人

デジタルリスクラボ編集部
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