研究員コラム

【海外レポート】意外と知られていない?ベトナムで見たテクノロジー企業~OYO編~

経済成長著しいアジアの中でも、多くの日本企業が進出しているベトナム。旅行で訪れたベトナムで見た、世界も注目するテクノロジーサービスをレポートします。今回は、OYOについて取り上げます。

【海外レポート】意外と知られていない?ベトナムで見たテクノロジー企業~Grab編~ 経済成長著しいアジアの中でも、多くの日本企業が進出しているベトナム。旅行で訪れたベトナムで見た世界も注目するテクノロジーサービス...

設立から7年で世界2位の客室を持ったOYOとは?

先日東京で開催されたSoftBank World 2019でCEOが登壇し、孫氏からも紹介されていたOYOという企業を皆さんは御存知でしょうか。最近では、OYOとソフトバンクが合弁会社を立ち上げ、日本でもホテルサービスを展開し、話題を集めていました。

OYOの強みは、AIなどのテクノロジーを活用した効率化、高速化と言われています。
具体的には、AIを使った最新情報を活用した価格戦略の実施や、アプリを活用した清掃スタッフの生産性の向上を行い、収益性が改善されていることなどが挙げられます。

また、7年で110万室のホテルを所有するに至った手法に関しては、街中にある中価格帯のホテルを買収しOYOブランドに変え、OYO基準で運営していく方法だそうです。新しくホテルを建てることなく既存のホテルをプラットフォーム上に吸収していったことが、異次元スピードの拡大を支えていると考えられます。

いままで個人商店で運営していたホテルを一つのブランドでつなぎ合わせ、信頼性と運営の効率性を担保することで、ビジネスを拡大してきたという観点では、Grabと同様のビジネス発想であると言えます。

OYOで徹底されていたこと

私は、今回の旅で2箇所のOYOホテルを利用しました。ともに、同様のOYOブランドのアメニティーが準備され、タオルも同様のものでした。これは、規模の経済で合理性を生み出していることが想定され、運営コストの削減に繋がっていることが想像されます。

日本の事例で考えてみると、旅館のIT化という観点では陣屋の事例が思い出されます。ただ、OYOの場合は、収益性を挙げるためのクラウドサービス提供だけでなく、ブランドまで提供しているFCという側面も持っているようです。

私の泊まったホテルは、日本円で1000円程度(水などの物価は日本の約半分程度)、価格帯は中価格帯で、私以外にはベトナムの地方から国内旅行としてOYOを利用している層が多かったように感じます。
この点は、客室数で競い合う世界トップクラスのホテルチェーンとは、大きく異なる点と言えるかもしれません。

体験して感じたOYOの成長戦略は?

リテシュ・アガルワルCEOはOYOのミッションを、「32億を超える世界中のミドルクラスの人々の暮らしに変革をもたらす」と紹介しており、このことからも、東南アジアなどの途上国には巨大な市場が眠っていることが想定されます。

観光業界に目を移してみると、日本への訪日観光客も右肩上がりに増えていますが、日本への興味を持つ観光客が増えただけでなく、海外旅行にいける所得を持った人口が増えていることも重要な要素のひとつです。

一人あたりGDPが15,000ドルを超えると、個人旅行を楽しむ人が増えるといわれていますが、今後も世界のGDPは成長し続けることで家族単位の海外旅行を楽しむ層が増えるのではないかと考えています。
近年、中国やタイなどのアジア諸国の都市部では、ホテルや移動手段を自ら選択して旅行する環境が徐々に整ってきたという印象があります。
そのような点からも、ターゲットとなる市場は拡大し続け、潜在的な成長の可能性を秘めた企業であると感じました。

先進国ではどのように戦うのか。

既にOYOは日本法人を立ち上げ、新しいビジネススキームの挑戦を始めています。

インドや東南アジアとは少し異なる形でOYOブランドを運用されていくと思いますが、インドや東南アジアから日本を訪れる人にとっては、OYOというブランドが安心感を与えることが想定され、今後の大きな市場を感じさせます。

OYO賃貸のサービスは、社会問題を解決する可能性も秘めているように感じます。東南アジアでの宿泊時のデータを活用して、はじき出された信頼スコアをもとに、日本に出稼ぎに来た外国人への賃貸サービスの展開が出来るのではないかと感じています。つまり、日本に働くために訪れた外国人は職がなければ、家が借りられず、家がなければ、就職も難しい問題の解決の糸口になるのではないかと思っています。

一方で、日本で展開されているOYO LIFEは、話題になっているようなWeworkや、以前日本の不動産市場でも話題になったかぼちゃの馬車のようなサブリースの形式をとっているため、資金繰りのリスクをどのように回避していくのかは、興味深いです。

東南アジアでテクノロジーが発展する背景

約1週間、ベトナムの複数都市をローカルな移動手段で点々としましたが、急速なグローバル化が進んでいることを感じました。

狭い商圏のなかで形成されてきた営みに、国内外の商圏から企業や人が入ってくる際に、ローカルルールやルーティーンからグローバルスタンダートな形への適応の必要性が生じています。

その中で、今まで繋がりがなかったローカルルールやルーティーンを一つのプラットフォームに載せ、適応する環境を作ることが、今東南アジアでテクノロジーが必要にされている領域だとも思いました。

一方で、ハード面でつなぎ合わせた先に、ソフト面でどこまでブランドを高めることが出来るかが、さらなる成長の鍵になるように感じました。

まだまだ狭い商圏の中で有象無象の小さなビジネスが社会を支えている東南アジアですが、テクノロジーが一つ一つのビジネスをつなぎ合わせることで大きな商圏が確立され、効率化が進んだときには、日本企業にとって大きな市場にもなりうるし、脅威ともなりうるように感じました。

【執筆】奥村高大 (おくむら たかひろ)
同志社大学卒業後、銀行に就職。その後、企業の経営課題解決を目的とするフリーランスのシェアリングサービスに従事し、2018年にエルテスに入社。事業推進Grにて、マーケティング業務を中心に、デジタルリスクラボの立ち上げ、運営、執筆を行う。

この記事を書いた人

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