研究員コラム

【海外レポート】意外と知られていない?ベトナムで見たテクノロジー企業~Grab編~

経済成長著しいアジアの中でも、多くの日本企業が進出しているベトナム。旅行で訪れたベトナムで見た世界も注目するテクノロジーサービスをレポートします。

世界の企業が注目するベトナム

日本から飛行機で約6時間、時差2時間に位置する成長著しいアジアの国【ベトナム】は、人口は約9,467万人、平均年齢30.4歳と人口ボーナス期を迎える非常に若い国です。

19世紀後半からはフランスが統治する時代もあり、街の作り方やパンを食べるような食文化は、フランスの影響を受けている部分も多く見受けられます。

経済的に見てみると、GDPの規模は日本の1/20程度ですが、2018年の経済成長率が7.08%と非常に高い数値を示している国でもあります。

私の感覚ですが、韓国や中国からの観光客を中心に欧米も含めて様々な国からの旅行者がいました。

その中でも、ハノイのお店では現地のビールと並んで、韓国のお酒も取り扱われており、韓国との繋がりが強いように感じました。
また、中国からの観光客は、団体で訪れている旅行がケースが多く、一方でヨーロッパやアメリカからはバックパックやインターンで長期滞在している若者が多い印象を受けました。

そんな中で、途中に立ち寄ったニャチャンというリゾート地は、ロシアとの繋がりが強く、街中の標識にロシア語が書かれているような地域もあり、一部地域では特定の国と繋がりの強い傾向もあるようです。

ソフトバンクビジョンが投資するテクノロジー企業

そんなベトナムで、今テクノロジーが急速に国民の生活を変え始めています。
みなさんもご存知のソフトバンクが運営する投資ファンドは、世界が注目する企業に投資していますが、アジアを中心にサービスを展開しているマレーシア発祥のGrab、インド発祥のOYOにも投資をしています。

皆さんは、Grab、OYOという企業をご存知でしょうか?

Grabは、時価総額が100億ドル以上の「デカコーン」と評価されており、OYOは、先日東京で開催されたSoftBank World 2019で「わずか7年でマリオットグループを抜き、世界2位の客室数を誇るホテルグループになった」と紹介された企業です。

今回は、前編として世界が注目するデカコーンGrabについてレポートします。
(後編では、OYOについて取り上げる予定です。)

東南アジアの交通インフラとなりつつあるGrabとは?

Grabは、2012年にマレーシアで誕生したサービスで、アメリカで利用が進むUber、Lyftの配車サービスの東南アジア版とイメージ頂けると分かりやすいかと思います。

ベトナムだけでなく、マレーシア、インドネシアの都市部では、Grabと書かれた緑のユニフォームやヘルメットを被り、バイクに乗っている人を見かけたことのある方も多いと思います。UberやLyftに比べて、タクシーは車ではなく、バイクが中心であることが異なる点と言えます。

Grabの大きなイノベーションは、個人商店として活動していたバイクタクシーのドライバーに、Grabというブランドのプラットフォームで仕事を提供し、顧客に対してもGrabという信頼性を与えることでビジネスの活性化を生み出している点だと思います。

また、現地のSIMを利用して通話も可能な状態であれば、GoogleマップからGrabサービスへの遷移する動線が整備され、非常に簡単にGrabタクシーを呼び出すことが可能でした。
そして、Grabを活用する一番のメリットは、東南アジアを旅行した際に問題となるぼったくりの防止と言えます。

Grabのアプリ内で行き先や料金のコミュニケーションが完結するため、適正価格で言語の壁を超えて、サービスを利用することが出来ます。海外旅行者にとっては、非常に便利なツールです。

現地のベトナムの友人と行動する際にも、街中でタクシーを利用するのではなく、Grabタクシーを呼び移動しました。現地の人でさえも、適正価格やコミュニケーションの簡素化を大きなメリットと感じているように感じました。

Grabが東南アジアの交通を席巻するのか?

実際にサービスを利用し、交通インフラとして、大きな役割を担っているGrabの今後について、少し考えてみたいと思います。この分析は、経営的な数値ではなく、現地のユーザーとしての課題感をまとめてみました。

私が現地で感じたのは、このままの右肩上がりの成長は難しいのではないかと感覚です。理由は大きく2つありました。

1:外部環境について

ベトナムをはじめとして東南アジアの国々は人口ボーナス期であり、今後も人口の増加が見込まれ、ホーチミンやハノイなどの都市に人口が流れ続けることが想定されます。

一方で、既に通勤ラッシュ時間帯では、渋滞が発生し、バイクも車も進まず、路線バスも大幅な遅延が発生しており、交通渋滞は深刻な問題です。スコールが発生するにも関わらず、多くが自動車ではなく、バイクを乗り続けている理由でもあるように感じられました。

今後も、人口増加が見込まれる中で、自動車、バイクという交通手段の拡大は根本的な問題解決にならず、地下鉄などの鉄道の異なる交通インフラを導入することで解決することが求められるように考えられます。(実際にハノイでは、地下鉄の建設が行われています。)

そのような背景から、タクシー市場が右肩上がりに成長し続けることには、少し疑問を持ちました。

2:Grabタクシーのドライバー

夜、街中を歩いていると、Grabのヘルメットを持ったタクシードライバーに「lady?」と聞かれました。これは、売春の誘いであり、断ると「drug?」とマリファナの写真を見せながら、話しかけて来るようなこともありました。

世界で進むシェアリングエコノミーの流れを受けて急拡大しているGrabですが、おそらく固定給を得ているわけではなく、日本のUberEatsの配達員のように歩合制で有ることが想像されます。そのため、一部のドライバーは副業として違法な商売に手をつけていることが考えられます。

また、料金を60,000ドン(ベトナム通貨)で事前に決めた上で、現金で支払おうとしたケースで、手持ちが20,000ドン紙幣と50,000ドン紙幣だったため、10,000ドンのお釣りを受け取ろうとすると、お釣りを持っていないと主張されたケースもありました。

たぬきくん
たぬきくん
結局、私が勝てば50,000ドン、ドライバーが勝てば70,000ドンの条件でじゃんけんをして、負けてしまい、70,000ドン支払いました。悪いドライバーではなかったので、笑って写真を取りましたが…

私が経験したのが稀な事象だったのかもしれませんが、テクノロジーによってプラットフォームを作る(システム面)のイノベーションは起きているものの、ソフト面まで手が回っていない印象を受けました。

一方で、Grabは食品の配達や決済事業を今後強化していくという報道もあります。今後どのように事業展開していくのかは注目です。

現地でしか見えないものもある

WEBは、容易に世界中の情報を集める環境を整えてくれています。しかし、実際に現地で経験し、目にしないとわからないことも多くあります。まさに百聞は一見に如かずだと今回の旅で感じました。後編では、冒頭に取り上げた世界2位の客室を備えるOYOについて、レポートします。

【執筆】奥村高大 (おくむら たかひろ)
同志社大学卒業後、銀行に就職。その後、企業の経営課題解決を目的とするフリーランスのシェアリングサービスに従事し、2018年にエルテスに入社。事業推進Grにて、マーケティング業務を中心に、デジタルリスクラボの立ち上げ、運営、執筆を行う。

この記事を書いた人

デジタルリスクラボ編集部
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