新型コロナウイルスの感染拡大で、就職活動やインターンなど新卒市場も大きな影響を受けています。企業へ訪問して、対面で話を聞くことが難しい状況の中、Web上の情報の重要性は高まっているのではないでしょうか。このような背景を受けて、重要性の高まるSNS上で、人事、採用担当者がどのように見られているのかをご紹介します。企業の看板を背負う人事担当者が普段気をつけるべきことの参考にもなると思います。
SNSと新卒採用市場
近年、給料や待遇だけでなく、企業文化、働きがいを軸に就職活動を行う学生も増えています。Wantedly社が提唱する「共感採用」という言葉も広がりつつあります。
そのような影響を受け、働く社員の仕事への想いなどをSNS上で発信する取り組みが見られます。そのような情報発信は、企業の公式SNSアカウントに留まらず、人事の採用担当者が個人のSNSアカウントにプロフィールを公開し、運用しているケースも見られます。
このようなアカウントは、企業がリスクマネジメントの観点でどこまで関与しているのかはそれぞれだと思われますが、日々の出来事、採用への想いなどが発信されているケースも有り、高い自由度で運用されていることが見受けられます。
一方で就活生同士の情報交換もSNS上で活発に行われています。企業の選考情報の共有だけではなく、ときには面接時の企業側の対応や、選考落ちした企業の対応など、様々な情報が頻繁に共有されています。
採用側、候補者側で利用の頻度が上がっているSNSですが、採用側の人事担当者が炎上するケースも少なくありません。採用担当者がSNSを運用することは、面接だけでは伺い知れない社風など企業の中を伝えるためには、有効な手段であることは間違いありません。
しかし、対応を誤ってしまうとネガティブな影響を与えかねないという観点で、実際にどのような炎上が発生しているのか、見ていきたいと思います。
オープンSNSでの内定者とのやりとりで炎上
人事担当者個人のTwitterアカウントなどで、内定者とオープンにコミュニケーションを図るケースも有るようです。オープンなSNS上で互いの関係性を共有することは、仲間意識を高めるエンゲージメント効果を生み、内定者のフォロワーにも企業風土をアピールする効果が考えられます。一方で、そうした試みが裏目に出てしまい、就活生はおろかSNSを利用するあらゆる層の反感を買ってしまうこともあります。具体的に見ていきましょう。
とある人事担当者は、Twitterで下記の主旨の投稿を行いました。
・内定者が黒色のマスクをつけていたことを紹介
・人事担当者は、以前から黒色のマスクに対する先入観を持っていた
・内定者の影響から、黒色のマスクを実際に使ってみると快適であった
・文末に黒色のマスクをつけていた内定者のアカウントのID添えた
この投稿が、「内定者を馬鹿にしている」「内定者のアカウントがタグ付けされており、個人情報がわかる投稿を人事担当者がしてもよいのか」と批判が集まり、結果的に人事担当者はSNSアカウントを非公開設定に変更しました。
(引き合いに出された内定者は「人事と距離の近い会社の良さ」「曲解された受け取りをされた」と人事担当者を擁護しています)。
オープンなSNSの場合、1対1のコミュニケーションではなく、他の多くのユーザーに見られている可能性を忘れてはいけません。別のユーザーから投稿内容を意図せぬ形で解釈され、炎上が広がることはSNS炎上でよく見られる現象です。
電話口の対応もSNSで拡散
企業の顔でもある人事担当者は、SNS上の振る舞いはもちろんリアルな場での振る舞いも就活生から見られています。面接時や説明会での発言や振る舞いが就活生によってSNSに投稿され、炎上に繋がることはしばしばありました。
しかし、リアルな場で見られているのは、面接時や説明会時に限ったことではありません。今回は取り上げる事例は、電話口の対応がSNS上で拡散されてしまい、炎上に繋がったというものです。
炎上に繋がった具体的な事象は以下のようなものです。
・インターンシップに合格した学生が、別日程への変更を電話で依頼
・人事は強い口調で一度日程を承諾したことに言及
・その内容を学生がTwitterに投稿
学生によって、インターンシップ先が有名企業であったことが開示されており、この投稿は多くの反応を集めました。コメントの中には、周囲の就活生と見られるSNSアカウントから、「あの企業の人事がそんなに怒りっぽいのは意外」「もともとそういう人が多い社風なのだろうか」といった内容の投稿も見られました。電話越しの対応のため、本当に強い口調で対応していたのかは、不確かではあるものの、SNSに投稿されることで、企業のレピュテーションに影響を与えると言えます。
デジタル時代の就活生との向き合い方
新型コロナウイルスの影響を受けて、急速に広がったオンライン面談などのデジタルツールを活用することで、離れていても気軽に情報を受け取ることが可能になりました。
しかし、SNSや電話などのコミュニケーションは、リアルな対面のコミュニケーションに比べて情報が切り取られてしまうため、物事が誤って伝わってしまうこと、受け取り手に誤った解釈を与えてしまうことがあります。ちょっとした些細な行動が、今までの信用を台無しにしてしまうケースもあります。このことを忘れてはなりません。
また、目の前にいる相手とは価値観を共有していたとしても、オープンなSNSでは誰でも投稿を見ることが出来るため、炎上の要因にもなります。
改めて人事の採用担当者は、自分の投稿や振る舞いがあらゆる人に見られている可能性があると意識することが重要です。そのような対応が難しいと感じるのであれば、SNS上では自身と所属企業を結び付けないなどの配慮が必要になります。
デジタルリスクラボ編集部
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