プレスリリースや投稿内容が瞬間的に拡散され、炎上が発生してしまうことは、多々あることです。投稿した日に炎上せずとも、時間を経て炎上に繋がってしまうこともあります。今回は、時間が経過してから炎上してしまったケースを考察してみました。
※本記事は、2014年8月21日に公開された記事を一部再編集しております。
話題になったのは元記事掲載から1年後!
リーズナブルかつ高品質なカジュアルファッションを手掛け、日本ではその名を知らぬ者のない大手衣料品会社A社。
ここで働いた経験のある学生が、アルバイトの実態を赤裸々に語った記事が、昨春ネットで紹介されました。
記事は「時に厳しいこと、独自のルールなどがあったものの、やりがいも感じた」といった論調のものでしたが、書かれた業務実態を弁護士が検証した結果、複数の「違法事案」が含まれていることが発覚。
元記事である学生アルバイトのインタビューではなく、法律サイトにアップされたこの検証記事をめぐって議論が過熱し、炎上状態に陥りました。
事件の経過
A社の元アルバイト学生が業務実態について語ったインタビュー記事が某サイトに掲載される。この時点では特に大きな問題は発生していない。
上記の記事掲載から約1年後、法律関係サイトで、この記事を元にA社の業務実態を弁護士が検証し、批判した記事が掲載される。
「全部違法でした」という過激なキャッチコピーの影響もあり、記事はたちまち拡散される。(弁護士によって「違法」であるとされた元記事の内容を参考に記載)
1.アルバイトの立場でもサービス残業
2.接客のため、会社の服を半ば購入を強制
3.みんなが分かるところでアルバイトの評価を発表
4.休憩中にDVDを見て勉強させる
5.急に胸ぐらをつかまれる
Twitter、ブログサイト、ニュースサイト、匿名掲示板等で話題が拡大。炎上状態になる。
あの大手衣料品会社A社の元アルバイトのインタビュー記事が某サイトに掲載。
その記事をもとに、「A社はブラック」と叩かれたのはそれから1年後のことでした。
元記事を引用した「検証記事」から炎上
本事案の珍しいところは、元記事が掲載されて1年近く経ってから、異なる記事をきっかけに炎上した、という点でしょう。
元記事では、衣料品会社に対してニュートラルな論調でしたが、後にネガティブな情報だけを抽出した記事が掲載されたことで、炎上が引き起こされたと考えられます。
Web上には、このようなリスク因子となる内部情報や批判投稿が多数存在しています。こうした潜在的リスクを把握するには、あらかじめ自社に対する継続的な調査を行っておくことが重要といえるでしょう。
さらに気をつけたいのが、こうしたタイムラグがあっても、すぐに元記事に辿りつけてしまうという危険性。ひとたび世に出た情報は消去できない、WEBメディアならではのリスクといえます。
「やっぱりブラック」「衣料品業界では当たり前」
元記事、検証記事をそれぞれ読んだ消費者の意見は真っ二つに分かれました。
ひとつは「やはりブラックだったか」「服は支給なのかと思っていた」「社長は高額納税者だが、現場がブラックだという実態を知らないのか」といった批判的なもの。
そしてもうひとつは「厳しいけれど概ね普通のことでは?」「衣料品業界では、自社の服を割引で買う(=着て接客する)のは当たり前かと思っていた」「某社の服なら安いからマシな方では?」といった、擁護論的なものです。
日本のみならず世界的に店舗を展開する超有名企業だけに、本事案は大きな注目を集めました。しかし、他の企業の炎上事例のように「芋づる式に内部リーク者が出る」、「新たなスレッドが乱立する」といった危機的な状態には陥らず、その後は沈静化しています。
もとよりWebの活用法には定評のある企業だけに、いたずらに焦って対応するよりも静観するのをよしとしたのか、当時推進中だった「アルバイト・パートの正社員化」の取り組みで、悪しき評価を払拭できると考えたのか、それは定かではありません。
いずれにしてもWeb上には思わぬリスクの種や、火種となるネタが潜んでいると認識するに足る事例です。このような事例を他山の石とし、自社に対するWeb上の記事の監視は怠らないようにすべきと言えます。
※本記事は、マスコミ報道やインターネットなどで公開されている情報に基づいて作成しております。また、本記事は、読者の方々に対して企業のWEBリスク対策に役立てていただくことを目的としたものであり、事案そのものに対する批評その他を意図しているものではありません。
デジタルリスクラボ編集部
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